バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

ヘレヴェッヘがモダン・オーケストラと奏でるシューマン「交響曲第4番ニ短調」

 かつてエリアフ・インバルマーラーブルックナー交響曲全集を録音した際のパートナー、フランクフルト放送交響楽団は、2005年以降「hr交響楽団 hr-Sinfonieorchester」という名称になっている。以前ジャン=クリストフ・スピノジやエマニュエル・アイムの指揮で演奏したラモーやヘンデル、リュリなんかを紹介したように、バロック音楽もきちんとこなせるモダン・オーケストラだ。
 そのhr交響楽団YouTubeに自前のチャンネルを持っていて、先月フィリップ・ヘレヴェッヘ(Philippe Herreweghe, 1947- )が指揮したベートーヴェンシューマンブラームスなどのヴィデオが公開されていた。中でもシューマン交響曲第4番 ニ短調 Op.120」は特に素晴らしかった。

 第1楽章序奏のヴィブラートを控えめにした響きの中でモチーフが積み重ねられ、その頂点でスラー・スタッカートのアウフタクトに導かれ3つの下降する8分音符が現れるところは、それまでの言説を「念を押しながら」繰り返しているように感じられて、とても印象的だ。その後もヴィブラートで響きが過度にリッチになることを避けながら、ひとつひとつのモチーフを重ね合わせることで作品に語らせていく姿勢が貫かれている。
 そもそもヘレヴェッヘ古楽器オーケストラ「シャンゼリゼ管弦楽団」とシューマン交響曲や協奏曲を1990年代の後半に録音しており、そこでも交響曲第4番は改訂版の方で録音していた。hr交響楽団との第4交響曲の演奏はCDよりも落ち着いているので、曲の展開を追いやすく、作品の姿が捉えやすい。同じモチーフが楽章を越えて成長していく様を聴いていると、シューマンがこの作品に「交響的幻想曲」というタイトルを付けようとしたことも、あながち間違ってはいなかったのではないかと思った。まあ、聴いてみなはれ。