バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ブリテン「戦争レクイエム」

 ベンジャミン・ブリテン(Benjamin Britten, 1913-1976)の名前を聞くと反射的に「Let us sleep now」のメロディーが脳裏に響く。これは「戦争レクイエム」の最後で男声2人によって歌われるフレーズだが、頭の中で鳴っているのはペーター・シュライアー(Peter Schreier, 1935- )とディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Dietrich Fischer-Dieskau, 1925-2012)の声だ。自分にとってのブリテンの音楽というのはここから始まる。

 上のヴィデオはまさにその原体験となったヴォルフガング・サヴァリッシュWolfgang Sawallisch, 1923-2013)指揮NHK交響楽団の演奏(1979年5月7日、東京文化会館)。「Let us sleep now」は17分45秒のあたり。30年以上前のテレビ番組を今こうして観られることへの感謝。そしてサヴァリッシュ渾身の指揮ぶりに感動。未だに歌声が頭から消えないのは、この強烈な演奏あってのことだとわかった。

さあ、みな眠ろうではないか
 「天使たちがあなたを天国に連れて行くように
 あなたを殉教者が迎え聖なる都エルサレムに導く」
みな眠ろうではないか
 「天使があなたを出迎え
 かって貧しいラザロの入った永遠の安息に導きたまえ」
 主よ かれらに永遠の安息をお与えください
 そしてとこしえの光で照らしてください
みな、眠ろうではないか
 「平和の中にいこわせたまえ
 アーメン」

 「敵」を作り、それを叩きのめすことでこの世の存在を得ようとする人達がいる。「戦争レクイエム」は、作曲されてから50年以上もの間、世の中はまだ何も変わっていないということを静かに訴え続けているのではないかな。この作品が時代遅れとなり、歴史の中に埋もれる日は来るのだろうか。そんなことを考えた週末なのであったよ。

追記(2013.02.24)

 サヴァリッシュ氏は、2013年2月22日に自宅で亡くなられたそうだ。長年にわたる音楽の贈り物に心から感謝。合掌。