コープランド「我等の町」
謹賀新年。カレンダーが1月1日であること以外、何も変わることのない休日。2013年はそんな始まり。いい感じ。
アメリカの作曲家アーロン・コープランド(Aaron Copland, 1900-1990)に「我等の町」という作品がある。ソーントン・ワイルダーの「Our Town」という戯曲を映画化した際に作曲された音楽。特別ではない日常の中にある普段なら気付かない幸せ、そしてその幸せに気付く瞬間。故淀川長治の解説が泣かせる。何でもない日、ばんざい。
何にもないの、この人生には、何の変ったことないの。そうしてこのOUR TOWN、街で、この夫婦は結婚した。さあ楽しく、楽しく生きた、仲良く、きょうだい仲良かった。
[中略]
そうして、いいーお話が奇麗にいってるのに、二人目の赤ちゃんの時にこの花嫁さんが、死にかけたんですね。
[中略] 「うー、あたい死ぬ、あたい死ぬ、あたい死ぬ、あたい死ぬ」言うとこから、過去が出て来るんですね。
その過去がいいんですね、過去が画面に出て来るんですね。その死ぬ、死ぬ、死ぬいうお母さん、嫁さんのそばに、若ーい子供が出て来るんですね、それが過去ですね。
あたいは何のために生きてたんだろう。あたいは何もかも感謝しなかったな、あたいは何だろう、何だろう。今死ぬんだ、今死ぬんだ。
1940年、コープランドはこの映画のためにクリーンでクリアな響きを持つ音楽を作曲し、その中から何編かを選び演奏会用オーケストラ組曲の形に編み直した。そして1944年にはピアノ独奏用にアレンジ。なんでもない日常を描くストーリーには、色彩豊かなオーケストラよりシンプルなピアノ・ソロの響きの方が似つかわしい。
- "Our Town" suite for piano. Aaron Copland. - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=iJFOnhX5rwQ
- Aaron Copland-Our Town - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=h7_ObsZ4XyQ
世の中、特別なことの中に「日常」が埋没してしまっている。今年はピアノ版「我等の町」を聴くたびに、その「日常」を思い出すことになるんだろうな。
というわけで、2013年が皆様にとって良い年となりますように。今年もよろしくお願いいたします。