バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ボブ・ジェームスが奏でるスカルラッティ - The Scarlatti Dialogues

 年末のエントリーで言及したボブ・ジェームスBob James, 1939- )の「The Scarlatti Dialogues」がめでたく到着。1986-1987年に作成され1988年に発表されたものだから、今から四半世紀前のアルバム。
Scarlatti Dialogues
 収録されているのは下記11曲。

  1. パストラーレ ヘ長調, K. 446 (L. 433)
  2. Piuttosto presto che allegro ハ長調
  3. メヌエット ト長調, K. 471 (L. 82)
  4. プレスティッシモ 変ロ長調, K. 545 (L. 500)
  5. アンダンテ・モデラーニ短調, K. 41
  6. 猫のフーガ ト短調, K. 30 (L. 499) ("The Cat's Fugue")
  7. プレスト イ長調, K. 39 (L. 391)
  8. アンダンテ イ長調, K. 279 (L. 468)
  9. ヴィーヴォ ヘ長調, K. 445 (L. 385)
  10. アレグロ ニ短調, K. 552 (L. 421)
  11. アレグリッシモ ニ短調, K. 444 (L. 420)

 通して聴いてみたが、シンセサイザーによる多彩な音色とマルチトラックの技術を使った録音のおかげで、スカルラッティの作品に内包されている対話(ダイアローグ)の要素や音楽的なレトリックがより強く前面に出ているように思う。たとえば、3曲目「メヌエット」は3人くらいの人達の会話のように聴こえる。

 ちなみにチェンバロで演奏するとこんな感じ。

 CDケースの中には「ドメニコ・スカルラッティボブ・ジェームスの会話」という架空対談が入っており、そこにはボブ・ジェームスバロック音楽に対する理解を示す興味深いことが書いてあった。

S [スカルラッティ] : 君はジャズのバックグラウンドを持っているそうじゃね。ジャズが与えた演奏家への自由、それは影響をおよぼしとるかね。
J [ボブ・ジェームス] : 多くのリスナーはジャズ・ミュージシャンがフレージングをはっきり出すということにおいて、クラシックのミュージシャンとの大きな違いを感じるようです。変則的なアーティキュレーションがジャズの特徴なのです。それはエキサイティングで内的なシンコペーションを生むのです。そしてそれはもっと自然で人間的なものを生み出すのです。

S : 話を元に戻すがね、なぜ単にオーケストラを使わなかったのかね。Avison [チャールズ・エイヴィソン。バロック時代のイギリスの作曲家。スカルラッティソナタに基づく合奏協奏曲を作曲。] なんかは効果的なオーケストラの組曲をやっていた。
J : なぜその様なことが今までもっとでてこなかったのか不思議ですね。カークパトリック [ラルフ・カークパトリック。音楽学者、チェンバロ奏者。「K」はスカルラッティの作品につけた整理番号。] が伝記に書いていた事ですけれども、あなたの曲はキーボードのために書かれたものですが、そこにはトランペット、ギター、カスタネットそしてフル・オーケストラさえはっきり想像できるのです。[中略] 本物のハープシコードであなたの曲が演奏されることはひんぱんにありますが、我々には今協力な武器 [シンセサイザーのこと] があるのです。それはほんの10年前にはなかったものですよね。進歩するテクノロジーの結晶が、将来きたるべき音楽の道案内をすると思うのです。

 どうやら、優れた音楽家というのは鋭い直感力を併せ持っているようだ。