バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 フィリップ・グラス「完璧なアメリカ人」

 NHK BSプレミアムで放映されたフィリップ・グラスPhilip Glass, 1937- )のオペラ最新作「完璧なアメリカ人 The Perfect American」を観る機会を得た。ありがたし。

 2013年2月、スペインのマドリード・レアル劇場での公演。オペラの原作はペーター・シュテファン・ユンク(Peter Stephan Jungk, 1952- )の『アメリカの王 Der König von Amerika』(英訳:The Perfect American)、指揮はデニス・ラッセル・デイヴィス、演出はメトの「サティアグラハ」や「魔法の島」と同じフェリム・マクダーモット(Phelim McDermott)。
 このオペラでは、ウォルト・ディズニーの人間像が、死を間近に控えた時期を中心とするいくつかの絡み合ったエピソードで描かれている。フクロウのトラウマが伏線となり、最後はフクロウの姿をしたルーシーという子供に導かれ姿を消す。第1幕第4場でウォルトは「ルーシーは 私を悪魔から解放する誕生祝いなのだ」と言っているが、最後の場面で彼は「業」のようなものから永遠に解放されたのだろうか。ってゆーか、冷凍保存ではなく火葬となるウォルトにとって、ルーシーは闇だったのか光だったのか。
 グラスの音楽はミニマルだから客観的で叙述的かと思いきや、第2幕第5場でジョシュと会話する場面では、オーケストラがストイックな中にも表情豊かに登場人物の感情を支えている。また、リンカーンアンディ・ウォーホールが登場する場面では、歌手たちの演技も素晴らしく人物の描き方が見事。

 ところで、昨日のエントリーで紹介した『戦後のオペラ : 1945〜2013』にこのオペラが掲載されてる。世界初演が今年の1月にだというのに凄いものだ。また、たった4つしかない「作曲家列伝」の中に、ベンジャミン・ブリテンらと共にグラスが取り上げられているのにも驚いた。へぇ、そういう位置づけになるのか。そう思ってグラスの公式ウェブサイトを見たら、オペラとして24作品がまとめられている。2013年5月4日現在「The Perfect American」はまだ掲載されていないようだから、すでに25もオペラを書いているのか。なるほど。