バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ハイフェッツが奏でる鋼のようなメンデルスゾーン

このヴィデオは、見るたびに新しい発見があります。それはメンデルスゾーンの作品についてであったり、ヤッシャ・ハイフェッツ(Jascha Heifetz, 1901-1987)のことであったり、オーケストラの演奏であったり、本当に様々です。
ハイフェッツの演奏はイン・テンポを基調とし、明確なアーティキュレーションが付けられた鋼のようなものですが、まったくアゴーギクを使わないわけではありません。この映像を見ていると、フレーズの端々、あるいは音楽の瞬間的な特徴にあわせテンポに細かな緩急をつけているのがよくわかります。
しかし興味深いことに、ほとんどの場合そういったテンポの揺れは、その直後にイン・テンポの中へと吸収されていくのです。たとえば、少し「タメ」を作ったなーと思ったら、フレーズの最後を少し端折って、すぐ次の「決めのタイミング」のところでテンポに合わせてくる。もしくはその逆、といった感じです。指揮者にとっては、ちょっとしたフェイクの連続といったところでしょう。
ハイフェッツの「メン・コン」というと、シャルル・ミュンシュCharles Munch, 1891-1968)あるいはサー・トマス・ビーチャムSir Thomas Beecham, 1879-1961)と共演した録音が有名ですが、そのほかにもアルトゥーロ・トスカニーニ(Arturo Toscanini, 1867-1957)との録音も残されています。この演奏では、第3楽章でヴァイオリン・ソロに付いていくべき木管のアンサンブルがみごとに乗り損ねています。
それにしても、この映像でバックを務めるオーケストラは凄いですね。特に弦楽器のボウイングが見事です。本当に弓の端から端まで余すことなくスッパリ使い切っているのですが、ハイフェッツとの一体感を強烈に感じるのも、そのあたりに理由があるのかもしれません。