バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ラトルとベルリン・フィルのラモー

先日、サイモン・ラトル(Sir Simon Rattle, 1955-)とベルリン・フィルの新しいDVDが発売されました。ラトルが常任指揮者に就任する前の1993年に行われたコンサートを収録したものです。
この演奏会(1993年11月6-8日)では、エクトル・ベルリオーズ(Louis Hector Berlioz, 1803-1869)が作曲した「幻想交響曲」の前プロとしてジャン=フィリップ・ラモーJean-Philippe Rameau, 1683-1764)の叙情悲劇「レ・ボレアド(Les Boréades ou Abaris)」が取り上げられており、ベルリン・フィルが新進気鋭の指揮者ラトルと共にフランス・バロック音楽を演奏したということで話題になった公演です。
 
Berlioz - Symphonie Fantastique / Rameau - Les Boreades [DVD] [Import]
ラトルは1999年にザルツブルク音楽祭「レ・ボレアド」の全曲を指揮していますが、このベルリン・フィルとのDVDではその中から管弦楽曲の抜粋を演奏しています。解説書に書かれている曲目を引用してみましょう。

Jean-Philippe Rameau
Les Boréades ou Abaris (Ballet Suite)
1) Ouverture
2) Menuet
3) Allegro
4) Rondeau
5) Gavotte
6) Contredanse en rondeau
7) Air andante et gracieux pour Orithie et ses compagnes
8) Entr'acte, suite des vents
9) Entrée (Abaris, Polimnee, Les Muses, Zephirs, Saisons, Les Heures et les Arts)
10) Rigaudon I
11) Rigaudon II
12) Contredanse trés vive

オーケストラについて気がついたことをメモ。

  • 管と弦は全てモダン楽器、弓もモダン・ボウのように見える
  • 弦楽器の配置は左から順にファースト・ヴァイオリン(6名)、セカンド・ヴァイオリン(6名)、チェンバロを挟んでチェロ(4名)、ヴィオラ(6名)、コントラバス(3名)
  • 管楽器は弦楽器の後ろに2列。前列に(!)ファゴット4本、後列は左から順にフルート(ピッコロ持ち替え)、オーボエクラリネット、ホルン
  • 管楽器の後ろに打楽器奏者1名
  • 管楽器にはE.パユ、A.マイヤー、W.フックスなど若手の顔が見えるが、弦楽器にはコンサートマスター安永徹氏をはじめベテラン奏者が勢揃い。コントラバスのトップは昨年末に逝去されたR.ツェペリッツか?
  • 弦楽器は見事なまでにノン・ヴィブラートを基本として弾いており、時折聴かれるメッサ・ディヴォーチェも堂に入っている
  • リズム・イネガルもよく租借されており、ノン・ヴィブラート奏法と共にちゃんとした表現になっている

この演奏会は、18世紀末に起こったフランス革命を挟んで、フランスのバロック音楽(レ・ボレアド:1763年)と初期ロマン派の音楽(幻想交響曲1830年)を対比させるところにその意図があったのかもしれません。ラモーの響きは古楽器オーケストラより洗練されたものではありますが、演奏者もピリオド・アプローチの演奏を楽しんでおり、フランス・バロックの音楽として充分鑑賞に堪えうるものだと思います。「幻想交響曲」の演奏は、それとは対称的に、モダン・オーケストラの頂点に君臨するベルリン・フィルの機能を最大限発揮した素晴らしいものと言えるでしょう。
ベルリオーズもラモーと同じ奏法で臨んだとしたらラトルとベルリン・フィルはどのような成果を上げたでしょうか?このDVDを観て、ふとそんなことを想いました。
 

追記(2014.02.12)

コンサートの様子が一部YouTubeで公開されました。