バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ジョン・アダムズ作曲「シェイカー・ループス」に聴く弦楽合奏の響き

 上掲のリンクは、現代アメリカの作曲家ジョン・アダムズJohn Adams, 1947- )の初期の名作「シェイカー・ループスShaker Loops)」(1978 / rev. 1983)などを含む演奏会のヴィデオ(2010年3月27日、於:シテ・ド・ラ・ミュジック)。演奏は作曲者自身の指揮によるASKO/シェーンベルク・アンサンブル(Asko/Schonberg Ensemble)です。
 いつまでこのヴィデオを観ることができるのかはわかりませんが、「シェイカー・ループス」は32分くらいから始まります。予告を見たときには弦楽オーケストラ版による演奏なのかと思いましたが、そうではなくオリジナルの弦楽七重奏版(3vn, vla, 2vc, cb)による演奏でした。
 「シェイカー・ループス」は“ポスト・ミニマル”に属する作品で、これといったメロディーはなく、16分音符や8分音符による刻みが延々と続く場面が数多く出てきます。この演奏では各パート一人という少人数であるせいか、ガサガサした響きからしっとりした響きまで、様々な響きがよりシャープに、よりダイレクトに伝わってくるように思いました。ヴィブラートもよくコントロールされており、ピアノで演奏する箇所ではナイーブで繊細な響きを、フォルテで演奏する箇所ではブリリアントで力強い響きを実現しています。弦楽の響きというと、きちんとハーモニーの合った、等質で混じりけのない蒸留水のようなイメージを持たれることもあるようですが、クロノス・クァルテットの例をあげるまでもなく、弦楽合奏における表現の可能性というのはもっと幅が広く、奥の深いものであると思うのです。
 一方、弦楽オーケストラ版「シェイカー・ループス」の響きは、七重奏版に比べリッチでスケール感が増している分、聴きやすいかもしれません。特に第2部「Hymning Slews」での幻想的な表現は「大編成による弦楽合奏ならでは」と言えるでしょう。