コープランド作曲「クラリネット協奏曲」に聴く弦楽合奏の響き
その昔、米コロムビアのLPで「Meeting at the Summit」というアルバムがありました。ジャズ・クラリネットの大御所ベニー・グッドマン(Benny Goodman, 1909-1986)が同時代のクラシック音楽を演奏するという内容のものです。
収録されていたのは以下の4つの作品です。
- レナード・バーンスタイン (Leonard Bernstein, 1918-1990)作曲 「プレリュード、フーガとリフ (Prelude, Fugue and Riffs)」
- アーロン・コープランド (Aaron Copland, 1900-1990)作曲 「クラリネット協奏曲 (Clarinet Concerto)」
- モートン・グールド (Morton Gould,1913-1996)作曲 「クラリネットとバンドのためのデリヴェイションズ (Derivations for Clarinet and Band)」
- イーゴリ・ストラヴィンスキー (Igor Stravinsky, 1882-1971)作曲 「エボニー・コンチェルト (Ebony Concerto)」
いずれの作品も、当時アメリカで活躍していた作曲家たちの「ジャズの語法を用いた」協奏曲で、すべて作曲者が指揮をするという贅沢なものでした。このアルバムは、後年ベラ・バルトーク(Béla Bartók, 1881-1945)の「コントラスツ(Contrasts)」を加えCDとしても発売されました。
筆者がコープランド「クラリネット協奏曲」の存在を知ったのは、この「Meeting at the Summit」を通じてでした。ゆっくりしたハ長調の3拍子で始まるハープと弦楽の響きの上にクラリネットがうっすらと色を添えるように入ってくる様は、何度聴いても印象的で忘れがたいものです。サティの「ジムノペディ」になぞらえる事もあるようですが、乾いた響きの中にも情感が溢れるこの色彩感はコープランドならではと言えるでしょう。
- YouTube - Copland Clarinet Concerto Benny Goodman Part 1
https://www.youtube.com/watch?v=i1za5qebqqo
途中のカデンツァを挟んで、後半ではピアノも前面にでて、コープランドらしいアレグロの世界が展開されます。弦楽器は極端な高音域を弾くのでちょっと辛そうですが。
- YouTube - Copland Clarinet Concerto Benny Goodman Part 2
https://www.youtube.com/watch?v=p1XEYODmy0A
ベニー・グッドマンがソリストを務めコープランドが指揮をするこのヴィデオではロサンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団(Los Angeles Philharmonic Orchestra)が伴奏を務めています。チェロが10名いるので協奏曲の伴奏としては大変ゴージャスな編成です。ソロ、オーケストラとも万全の演奏とは言えないかもしれませんが、弦楽器の様々な奏法を駆使して紡ぎ出されていくコープランドの音楽の世界は、やはり独特のものだなと思った次第です。
今年2010年は、コープランド生誕110年・没後20年の記念の年にあたります。