バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 YouTubeに聴くJ.S.バッハのシャコンヌいろいろ

パトリック・ビスミュートのバロック・ヴァイオリンによる演奏

 パトリック・ビスミュート(Patrick Bismuth)が弾くバッハの「シャコンヌ」は、10分をきる最速演奏ということでも有名です。
    ビスミュートが演奏する「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」のCD
 以前、「俺様CD」にビスミュートが演奏するヨハン・セバスティアン・バッハJohann Sebastian Bach, 1685-1750)作曲「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」のCDについて、「そのテンションの高さと圧倒的なテクニックが、舞曲を弾ませ、フーガなどの対位法的な展開を淀みなく活気あるものにしていることにもっと注目すべきだと思う」と書きましたが、今でもその考えは変わっていません。「シャコンヌについて言えば、2拍目から始まる3拍子だということをこれほどはっきり示している演奏はないし、3拍子の拍節感を最後まで貫くことによってこの曲の即興的でフリオーソな側面が強調されるのは非常に興味深い」ところです。
 ビスミュートは、「付点4分音符+8分音符」という音型を「複付点4分音符+16分音符」にして演奏しています。確かトーマス・ツェートマイヤー(Thomas Zehetmair, 1961-)も同じスタイルだったかと思いますが、この楽章で本当にそうする必要があるのかどうかは議論の対象になるところかもしれません。しかし、そのリズムの取り方が演奏から眠気を取り除き、緊張感を創り出していることは確かです。
 なお、一般にシャコンヌ(Chaconnne)というフランス語のタイトルで知られているこの楽章ですが、バッハの自筆譜において「Ciaccona」(チャッコーナ)というイタリア語のタイトルが付けられていることはもっと注目されてもよいのではないでしょうか。

 曲集全体のタイトルは "Sei Solo a Violino senza Basso accompagnato." パルティータ第2番と言われている作品のタイトルも "Partia 2da a Violino Solo senza Basso." となっており、パルティータ第2番ではチャッコーナ以外の楽章も"Allemanda", "Corrente", "Sarabanda", "Giga"とイタリア語でタイトルが付けられています。
 

レオポルド・ストコフスキー編曲によるオーケストラ版の演奏

 バッハの「シャコンヌ」をオーケストラへ編曲したのはレオポルド・ストコフスキー(Leopold Stokowski, 1882-1977)だけではありません。たとえばヨーゼフ・ヨアヒム・ラフ(Joseph Joachim Raff, 1822-1882)による編曲、あるいは齋藤秀雄(さいとう・ひでお、1902-1974)による編曲はCDとして発売されているので、比較的容易にアクセス可能かと思われます。
 ストコフスキーの編曲(トランスクリプション)で最も特徴的なのは、作品のオリジナルな構成から離れて、コーダの部分を多少の変形を加えながら「p (ピアノ)」で再度繰り返すことです。ふたつ目のヴィデオの7分39秒からがその部分にあたります。
 この編曲では冒頭のテーマを中低弦によって静かに演奏しているので、「f (フォルテ)」で演奏されるコーダの後に冒頭を回顧するような部分を追加することによって、この楽章の「アーチ構造」をより明確化しようという意図があったのかもしれませんね。