バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 P.ヘレンダール「合奏協奏曲(グランド・コンチェルト)ヘ長調 作品3-6」について

去る2010年5月15日(土)、三鷹市芸術文化センター「風のホール」で「くにたちバロックアンサンブル第7回演奏会」を開催した折に、ヘレンダールの作品について簡単なスピーチを行いました。その時の原稿に加筆修正等を加え、掲載しておきたいと思います。
 

ヘレンダール「合奏協奏曲(グランド・コンチェルト)ヘ長調 作品3-6」について

ピーター・ヘレンダール(Pieter Hellendaal, 1721-1799)はオランダはロッテルダム生まれの作曲家、オルガニスト・ヴァイオリニストです。ハーヴァードの音楽人名辞典("The Harvard biographical dictionary of music")には、1737年から1743年にかけてイタリアに行き、タルティーニの下で研鑽を積んだとあります。

これから演奏する作品は、「グランド・コンチェルト作品3」と名付けられた曲集の中に含まれる1曲で、ヘレンダールが1751年にイギリスに渡った後の1758年に出版された作品です。
この作品3は全6曲より成り、その中には1752年頃に作曲されたものも含まれているようです。1752年というと、偉大なるヨハン・セバスティアン・バッハは亡くなっていましたがヘンデルは存命中で、ロンドンではフーガ風の対位法的な楽曲がまだ数多く作曲されていました。

作品3の6番目のコンチェルトでは第2楽章がそれにあたります。他の楽章が1分あるいは2分ほどの長さしかないにもかかわらずこの楽章は5分近い長さを持っており、いくつかのモチーフが組み合わさり、時としてその組み合わせを変えながら対位法的に絡み合うという構造を持っています。(下記参考ヴィデオの1分27秒くらいからが第2楽章です。)

今日は1曲目にパーセルを演奏し、最後の曲としてこれからロンドンで作曲されたヘレンダールの作品を演奏します。
イギリスではバロック時代の後にも、ヒューバート・パリー(Sir Hubert Parry, 1848-918)、エドワード・エルガー(Sir Edward Elgar, 1857-1934)、ジェラルド・フィンジ(GeraldFinzi, 1901-1956)をはじめとする数多くの作曲家達が、弦楽合奏のための素晴らしい作品を生み出しています。
その源泉のひとつとなったかもしれないヘレンダールの知られざる作品を皆様にご紹介できることを、私たちは大変嬉しく、また誇りに思っています。
ヘレンダールの合奏協奏曲作品3の6ヘ長調。どうぞゆっくりとお聴きください。
 

追補

当日のプログラムは以下の通りでした。

  1. パーセル「<妖精の女王>組曲
  2. コレルリ「合奏協奏曲 ハ長調 作品6-10」
  3. ヴィヴァルディ「弦楽のための協奏曲 ハ長調 RV114」
  4. ヘレンダール「グランド・コンチェルト ヘ長調 作品3-6」

特に意識して選曲をしたわけではないのですが、第7回演奏会で演奏した作品は、全て最終楽章が3拍子の音楽でした。その「3拍子」というのは「メヌエット」か「シャコンヌ」であり、年代順に並べてみたところ、シャコンヌパーセル)、速いメヌエットコレッリ)、シャコンヌ(ヴィヴァルディ)、遅いメヌエット(ヘレンダール)というように、シャコンヌメヌエットが順序よくきれいに並びました。
また、イギリスゆかりの作曲家でイタリアの作曲家2名を挟む格好となり、今回の演奏会はプログラム構成上も興味深い内容だったと言えるのかもしれません。もちろん、偶然そうなっただけなのですけれども。
くにたちバロックアンサンブル第7回演奏会 リハーサル風景
[twitter:@pomz99]