バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 YouTubeに聴くサミュエル・バーバー

 今年2010年は、アメリカの作曲家サミュエル・バーバー(Samuel Osborne Barber II, 1910-1981)の生誕100周年にあたります。バーバーは叙情的でロマティックな作風で知られた作曲家ですが、その中でも「弦楽四重奏曲第1番ロ短調String Quartet, Op. 11)」の第2楽章を弦楽合奏用に編曲した「弦楽のためのアダージョ(Adagio for Strings)」やソプラノとオーケストラのための「ノックスヴィル、1915年の夏(Knoxville: Summer of 1915)」は特に有名です。
 バーバーとの出会いは大学に入りたての頃、アメリ音楽史の勉強をしていた時のことです。『American music : a panorama』という本を読みながら、レコードを聴いたり楽譜を読んだりするという授業の中で「ノックスヴィル、1915年の夏」を聴き、一瞬にして魅了されたのを今でも覚えています。その時に聴いたのはレオンタイン・プライス(Leontyne Price)のLPレコードでしたが、短い序奏のあと「なんとなく」歌い始められるシンプルなメロディーラインは、シンプルであるが故に印象的で忘れがたいものです。

 一方、「弦楽のためのアダージョ」で忘れられないのはクロノス・クァルテットによる演奏です。弦楽四重奏による演奏なので、「弦楽のための」ではなく「弦楽四重奏第1番」より第2楽章とするべきでしょうか。

 この演奏でのヴィブラートの使い方には注目すべきものがあります。中でも4分7秒の箇所で突然現れるノン・ヴィブラートには、何度聴いても「はっとさせられる」以上のものがあるように感じられるのです。音楽は時間芸術とも言われますが、時の流れが止まり、そこに聴こえ、また見えてくるもの。この演奏にはそうした瞬間に広がっていく、特別な世界が内包されているのです。