アーノンクールとCMW 2010 - その1 (2010年10月24日 NHKホール)
ニコラウス・アーノンクール(Nikolaus Harnoncourt, 1929- )とコンツェントゥス・ムジクス(Concentus Musicus Wien)の「最後の来日公演」、その初日に行ってきました。
- J.S.バッハ/ミサ曲 ロ短調
2010年10月24日(日) NHKホール(NHK音楽祭2010)
http://pid.nhk.or.jp/event/PPG0051081/index.html
→ 魚拓
J.S.バッハの「ロ短調ミサ」BWV232は、このツアーの1週間程前となる2010年10月16日(土)と17日(日)に、ウィーンのムジークフェラインでも演奏された曲目です。
- Termine Saison 2010/2011
〔Nikolaus Harnoncourt〕
http://www.harnoncourt.info/index.php/article/articleview/823/1/5/
「NHK音楽祭2010」でのコンサートは、心を揺り動かされる演奏、いえ、出来事でした。「演奏を聴いた」というよりコンツェントゥス・ムジクスとアルノルト・シェーンベルク合唱団、そしてソリスト5名が心をひとつにあわせ、バッハの崇高な作品を音として具現化している現場に立ち会った、とでも言うべき内容でした。2006年の来日公演のときと同じように、全員が同じ言語を話しているかのように、「ロ短調ミサ」として書かれているひとつひとつのフレーズやモチーフを丁寧に紡ぎ出し、折り重ねているように感じられました。
アーノンクールたちの演奏は、決して声を荒らげたりしません。最後に演奏される「Dona nobis pacem」は、太鼓やラッパを轟かせて終わるというのではなく、演奏の中で語り尽くした神とバッハへの感謝の気持ちを、再び胸の内に抱くように穏やかに響かせて閉じる、というように聴こえました。
全ての演奏が終わってからも、聴衆がすぐに拍手をするということがなく、アーノンクールが指揮を終えてふた呼吸くらいあってから拍手が始まったのが印象的でした。
この演奏会の様子は、後日NHKのハイビジョン放送で放映される予定だということです。
- NHK音楽祭2010 放送予定
〔NHKクラシック〕
http://www.nhk.or.jp/classic-blog/200/62980.html
→ 魚拓
オケや合唱の配置などは映像を見ればわかると思いますが、気がついたことをいくつかメモしておきたいと思います。
- オケの配置:木管は指揮者の右手にトラヴェルソ、オーボエ、ファゴットの順。弦楽器は左からファースト(6名)、セカンド(6名)、チェロ(2名)、ヴィオローネ(2名)。ヴィオラは、通常なら木管の一列目が並ぶところに横一列で4名。
- ティンパニとトランペットは左手奥、ホルンは右手奥。
- オルガンは指揮者の正面。
- 合唱の配置:二重合唱になる前は左から、ソプラノI、ソプラノII、アルト、テナー、バス。1986年の録音ではソプラノIとIIは対向配置だったので、ちょっと意外でした。
- 合唱パートは、一部コンチェルティーノのようにOVPPでソリスト達によって歌われた箇所あり。
- オケも、一部弦楽器の人数を減らして演奏している箇所あり。
- 「Gloria」と「Credo」の間に休憩20分。演奏前(17:30-17:45)に行われた奥田佳道氏の解説によると、ウィーンのコンサートでも同じ箇所で休憩をとった(休憩時間は不明)。
- 今回のツアーにチェロのヘルヴィヒ・タヘッツィが参加していないのはとても残念。
「ミサ曲ロ短調」は、10月26日(火)にはサントリーホールでも演奏されます(→魚拓)。所用で聴きに行くことができなくなってしまい、本当に残念です。
参考リンク・文献
- YouTube - Message from Nikolaus Harnoncourt Vol.2 バッハ:「ロ短調ミサ」について
- バッハの《ロ短調ミサ》 : ニコラウス・アーノンクール、マンフレート・ヴァーグナーとの対話で語る
〔ワーナーミュージック・ジャパン WPCS12409〕
1986年に録音されたCDの解説書に掲載されたアーノンクールへのインタビュー。2度目の録音にかける意気込みだけではなく、1968年に行われた1度目の録音との違い、演奏用資料の作成や作品解釈についてなど、アーノンクールの演奏実践を理解する上で非常に参考となる内容が掲載されています。
- 《ロ短調ミサ》の演奏解釈の歴史
ニコラウス・アーノンクール著『音楽は対話である : モンテヴェルディバッハモーツァルトを巡る考察』(改訂第2版) (アカデミア・ミュージック, 2006.11) p.278-298