バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 すちゃらか東北道中記

 裏道をぷらぷら歩くのが好きだ。大通りから一本・二本裏手にある住宅地の中を歩くと、人々の生活を肌で感じられるような、そんな気がする。思わぬ光景に出会うのも、どちらかというと裏道においてである。たとえば、2階のベランダにある格子の間から、猫が「だらりん」と前脚を投げ出しながら、ぼんやり通りすがりの人を眺めてる、みたいな光景。
 先日、所用で遠野に行く機会があった。JR釜石線の新花巻から遠野に向かう間、車窓には東北の秋の景色が流れていた。それは、秋の日差しに黄金色に光る刈り入れ直前の稲穂だったり、深い緑に覆われている山々だったり。その美しさに目を奪われていると、「人口竜巻発電所建設予定地」とか、我が町は暴力団排除宣言してます、みたいな看板も立っていて、「そういうこともあるんだな、こんなところで」と思ってみたりもする。
 で、そんな中、家々が立ち並んでいる様子が見える。こんなときには、つい列車を降りてそこを歩きたいという衝動に駆られる。名所・旧跡があるわけでもなく、民家が立ち並んでいるだけなのだが、別にいいじゃん。そこに歩くべき道があって、人の営みが感じられれば。きっと、家々のひとつひとつに、それぞれの暮らしを映し出している様々な光景があるに違いないのだよ。
 遠野で用を済ませた翌日、釜石線の終点である釜石にも行ってみた。釜石駅から市の中心部にある大通りを歩き、津波が奪い去ったものを知る。がらんどうになった商店や会社、まだ瓦礫のようなものがそのままになっている小さな店。いや、それは瓦礫というよりは、心ならずも一瞬にして破壊されてしまった人々の暮らし、と言うべきか。
 ある所では、思い出の写真や記念帳などが籠に収められ、店先に置かれていた。その店内はというと、まだ物が散乱し片付けられてはいない。きっとこの籠は、長い間持ち主の帰りを待ち続けてきたのだろう。そして、これからも待ち続けることになるのかも、しれない。
 一方で、被災した地域の中にも、ぽつんぽつんと営業を再開している美容院やコンビニ、ラーメン屋などがある。そうそう、港近くの草むらでは、秋の虫が「コロコロ」と鳴いていたよ!
 津波の影響で休館中の市民文化会館の入り口に、「あせらず、あきらめず/明日へ そしてありがとう/負げねっすよ釜石」という大きなメッセージが掲げられていた。あきらめないこと、負けないこと。
 私たちは決して忘れない、東北のことを。
 そしてまた歩きに行くよ、ぷらぷらとね。


釜石市の市民文化会館

Flickrにまとめた遠野と釜石の写真