バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 スティーヴン・イッサーリスのフォーレ

 「集中力抜群で忘れがたいウィスペルウェイのリサイタル以来、チェロの作品をよく聴くようになった」シリーズの第2弾。

 スティーヴン・イッサーリスが演奏するフォーレはどれも素晴らしい。ふたつのチェロ・ソナタはもちろんのこと、「ロマンスOp.69」、フルートのための「コンクール小品 Morceau de Concours」(アルバム「Cello World」所収。ピアノはイギリスの作曲家トーマス・アデス)、あるいは「子守歌 Berceuse Op.16」(同「Children's Cello」所収)のような小品にも強く惹かれる。
 言うまでもなくイッサーリスはガット弦の騎士である。しかし、彼の音楽は古楽器奏者のように「語り」一辺倒ではない。遠くのフレーズまで見通した「歌」の中に、ガット弦特有の「語り」の要素が織り込まれているのが最大の特徴であり魅力だ。ゴツゴツとした肌触りではなく、流麗でエレガント。おそらく、フォーレの作品が内包している世界は、イッサーリスのような音楽の体現者を必要としているに違いない。
 RCAから1995年に発売されたフォーレ・アルバムは、「ロマンスOp.69」で始まり、その初稿である「チェロとオルガンのためのアンダンテ」で締めくくられる。Op.69で奏でられたピアノのアルペジオは、まるでアーチを描くようにしてパイプオルガンの神聖でやわらかな和音の中に消えてゆき、イッサーリスのチェロはというと、オルガンを自らの肺として、深く呼吸をするかのようにフォーレの世界を再び歌い、そして幕を閉じる。
 ふたつの時間はひとつに溶けあい、時の彼方へ向かって消えていく。そこにあるのは、音楽という時間芸術だけが可能とする神秘的で美しい瞬間だと思うんだけど、どうかな。