バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ジェラルド・フィンジ「チェロ協奏曲」

 「夢にまで出てくるウィスペルウェイのリサイタル以来、チェロの作品をよく聴くようになった」シリーズの第3弾。
 イギリスの作曲家ジェラルド・フィンジ(Gerald Finzi, 1901-1956)が1955年に完成させた「チェロ協奏曲Op.40」の第2楽章。フィンジ節全開のこの作品に、一体、私たちはどのように向き合ったらよいというのだろう。

 1955年の作品だというのに、恐ろしいほど安らかなメロディーに満ちあふれている。セヴラックを聴いたとき、彼の音楽は猫のようだと思ったが、ここには聴き手を一心に見つめる眼がある。それも抱えきれないほどの愛情を持ってこちらを見つめる眼。その愛情に対してこちらが少しでも怯んだりすると、その眼は寂しげに伏せられる。だから逃げるのは向こうではなく、聴き手であるこちら側だ。なんだろ、この音楽は?
 Wikipedeiaによると、第2楽章は「愛妻の音楽的肖像として発想された」のだそうだ。きっとラブラブだったんだろうな、うらやましい。この曲を受け入れられる人と受け入れられない人というのは、はっきりと分かれるのかもしれないけれど、それでいいじゃん。人間だもの。
 フィンジは1956年9月27日、この作品の初演の翌日、オクスフォードの病院で亡くなった。享年55歳。彼の身体がこの世から消えても、彼の想いはこの作品と共にずっとあり続ける。今、この瞬間も、フィンジの魂は「お空」の向こうからその様子をじっと見ているのだろうか。
 不思議なものだな、音楽というのは。