バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ヒューバート・パリー「レディ・ラドナーの組曲」

 ずっと「ヒューバート・パリー」という名前だと思っていたら、正しくはチャールズ・ヒューバート・ヘイスティングス・パリーで、「サー」の称号もつけなきゃならんらしい。Sir Charles Hubert Hastings Parry。ええぃ、めんどくさい。
 イギリスの作曲家、パリーの「レディ・ラドナーの組曲 Lady Radnor's Suite」(1894年)は、はっきり言って名曲である。いわゆるひとつのマスターピース。古典組曲を模した6楽章からなる弦楽合奏のための作品だが、その対位法的な展開がたまらない。ファースト・ヴァイオリンはもちろんのこと、どのパートを弾いてもおもしろいんじゃないか。
 5つのパートが「対等」とは言わないまでも、自らの役割をわきまえながらそれぞれの言葉を喋る。ファースト・ヴァイオリンはメロディーを、セカンド・ヴァイオリンとヴィオラはメロディーを支えながら、チェロとコントラバスは音楽の基礎として進むべき道を示しながら。そして気分が乗ってくると、ファーストとセカンドは気持ちが通じ合って同じメロディーを奏でたりする。ああ、なんてすばらしい瞬間。対位法的に絡み合っているのに、全然堅苦しくなく和気藹々としている様からは、仲のよい友人や家族が、いつ終わるということもない会話を心から楽しんでいるような光景が浮かんでくる。

 ついでに、同じ弦楽合奏用の作品で「イギリス組曲 An English Suite」というのも甲乙つけがたい。こちらは、ラドナー夫人よりもかなり恰幅のよいイギリス紳士のような作品とでも言えばいいかな。会話の内容も、くだけたものから深刻な話題まで多彩で、言い回しもひねりがきいていたりするところがミソ。


Parry/Elgar:English String Mus