バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 This Is The Kit - Two Wooden Spoons

 どうでもいいけど、これはマジですごいな。たまげた。

 何がすごいかって、そこに流れている時間。歌い手ケイト・ステイブルズは、歌を歌っているのではなく、彼女のまわりに流れている「時間」を歌声として届けているかのようだ。ここに聴こえてくるのは、「歌」ではなく「時間」。ゆるやかで親密な時を聴く。
 ちょっと違うかもしれないけど、誰かのまわりに流れている「時間」を感じる音楽というと、武満徹の作品、特にロマンティックな後期の作品を思い出す。それは、作曲者のまわりに流れている様々な音を紡ぎながら、「時の流れ」を創り出すような作品たち。たとえば「ア・ストリング・アラウンド・オータム (Strings Around Autumn)」のような。

  

 音楽というのは時間芸術だ。普通「時間芸術」というと「時間の推移のもとに表現・享受される芸術」(デジタル大辞泉)という意味で使われるのだが、音楽は「時間を創造する芸術」でもある。This Is The Kitや「ア・ストリング・アラウンド・オータム」のビデオからは、音楽にしか作り得ない、独自の時間が流れてくる。「時間」というのは決してひとつではないのだよ。その素晴らしい時の流れを、もうひとつ知ることができたという喜び。そして感謝。