バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ピーター・スカルソープ「弦楽四重奏曲第8番」

 昨日、印刷博物館で開催されたデジタルなんちゃらシンポジウムというのを聞きに行った。その帰りに、あのウィスペルウェイの時と同じ市ヶ谷への道を歩いている時、ふと頭の中にスカルソープの音楽が鳴り始めた。ひとつ前のエントリーで「アメリカやアフリカ、オーストラリアの弦楽のための作品をごちゃ混ぜにしたプレイリスト」と書いたが、そこに混ぜ込んだ「弦楽四重奏曲第8番」の第2楽章だ。
 ピーター・スカルソープ(Peter Sculthorpe, 1929- )はオーストラリアのタスマニア出身で、オセアニアを代表する作曲家である。1970年には、日本万国博覧会のために「日本の音楽 Music for Japan」という管弦楽曲を書いているそうだ。一体、どんな曲だったんだろ?
 「弦楽四重奏曲第8番」は1969年の作品。ということは、万博の1年前か。CDに添付されているライナーノートによると、この作品はバリの音や音楽に発想を得ているとのこと。たとえば、このクトゥガン(Ketungan)とか。

 で、その第2楽章は3分ほどの曲。急−緩−急という3つの部分からなっていて、「急」の部分ではコル・レーニョやバルトーク・ピチカートのような弦楽器の特殊奏法を使って、巧みにクトゥガンのリズムを再現している。一瞬、ヴェーベルンの「弦楽四重奏のための5つの楽章」に似たような響きがしたり、ジャングルの中で鳥が鳴き出すような瞬間もあって、そのめまぐるしさに脳みそが揺さぶられるような感じがする。
 同じ南半球の作曲家ということで比較することに意味があるのかどうかはわからないが、ケヴィン・ヴォランズの弦楽四重奏曲と比べてみると、ヴォランズの音楽には余白があるが、スカルソープの音楽では常にキャンパスいっぱいに色が塗られている。この違いはどこからくるのか?もしかしたら、チャトウィンの『ソングライン』を読み終える頃には、何かわかることがあるかもしれないと思ってみたり。
 そういえば、ウィスペルウェイもスカルソープの作品を録音していたな。「チェロのためのレクイエム Requiem for cello alone」。そこにあるのは8番目のカルテットとはちょっと違う世界だけど、向かっている先には同じ風景が広がっているように聴こえるのが不思議。

 ちなみに、昨日は電車を乗り間違えなかったぞ。ちょっとあぶなかったけど、直前で気がついてセーフ!