バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 マラノア・ララバイ - Maranoa Lullaby

 「そういえば、他にもピーター・スカルソープのCDがあったような気がする」と思って家中探したら、やっぱりあった。ブロドスキー・クァルテットが演奏したスカルソープ・アルバム。
Maranoa Lullaby: Maranoa Lullaby
 収録されているのは「弦楽四重奏曲第8番」を含む6曲。8番目のカルテットがバリの音楽と結びついているように、他の5曲もカカドゥ国立公園トレス海峡などの場所と結びついているようだ。解説書のタイトル・ページにはティモール海周辺の地図が掲載されていて、どの作品がどの地域と関係があるのかということが矢印で示されている。なるほどな、わかりやすい。
 アルバムの最後に「マラノア・ララバイ Maranoa Lullaby」という1996年の作品。これはクイーンズランド州マラノアというところのアボリジニのメロディーに弦楽四重奏による伴奏をつけたもので、歌を歌ってるのはアンネ・ソフィー・フォン・オッターだ。ちなみに、そのメロディーは、H.O.レスブリッジ(Dr H.O. Lethbridge)によって採取され、アーサー・S・ローム(Arthur S. Loam)がピアノ伴奏をつけた形で1937年に出版された。現在、その楽譜はオーストラリア国立図書館のウェブサイトで見ることができる。

 歌詞はたったの2センテンス。

Mumma warruno,
Murra wathunno.

それに対して、レスブリッジがつけた英語の訳詞はこんな感じ。

Sleep as falls the dark in your bed of bark;
None shall harm you, dear, Mother watches near.

 スカルソープはこの楽譜にもとづいて「マラノア・ララバイ」という作品を仕上げている。ここにあるのは、母なる大地が、そこに生きる人々に対して歌う歌だ。その音楽は、聴き手の心を包み込むようにして、穏やかで暖かな時間とともに流れていく。これを聴いた人なら誰もが皆、その時間の中にもぐり込んで、猫のように丸くなりたいと思うのではないかな?どうだろ。
 あの地震から今日で9ヶ月。被災した方々、そして心ならずも天に召された方々が、ともに、この子守唄のような穏やかな時間の中で過ごすことのできる日。そんな日が1日も早く訪れるとよいのだけれど。
 
2011.12.14追記:
 スカルソープの「マラノア・ララバイ」は、半音階で進行するとこなど、ちょっとディーリアスっぽい雰囲気が漂う。そして、曲の最後が、「What a Wonderful World」のラストでサッチモが歌う「オ〜、イェ〜」と同じだなぁ、といつも思う。不思議な共通点。