バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 フィリップ・グラス「サティアグラハ」

 上司が仕事を終えて職場を出るのを見送り、建物の鍵をロックした時にはすでに夜の19時を20分ほど過ぎていた。なぜそんなことを気にしたかというと、18時30分から始まるオペラを観たかったからだ。

 「METライブビューイング」というのは、映画館でメトロポリタン・オペラの舞台が観られる、というやつだ。それも今上映されているのは、日本ではまだステージにかけられたことがなく、これからも絶対にやらないだろうようなフィリップ・グラスの「サティアグラハ」。上演時間は、泣く子も黙って寝てしまう3時間52分。16日までやっているので、別に水曜日に観に行ってもよいのだけれど。
 「サティアグラハ」というのは、「不服従」を意味する言葉なのだそうだ。ヴィトゲンシュタインのありがたい教えによると、「知らないものについては沈黙しなければならない」ようなので、このオペラのストーリーはこちらとかこちらで。あと、ガンジーの前半生を扱う内容だけに、日印協会のウェブサイトにもお知らせがでていて、ちょっとびびった。

 グラスの音楽というのはクリスタルのようだ。どんなフォルテが響こうとも、一点を凝視する客観的で冷たい視線が存在する。その音楽を聴き始めると、聴き手はクリスタルを外から見るのではなく、音楽とともにクリスタルの中に閉じ込められてしまう。いっさいの無駄をそぎ落とした、分散和音にシンコペーション・リズムの音楽。
 だから、グラスの器楽作品を聴いていると3分くらいで飽きて、もとい窒息してしまうことがある。しかし、「サティアグラハ」はオペラだ。もしかしたら、歌手たちの呼吸が、クリスタルに風穴を開けているかもしれない。それを体験してみたいのだよ。
 さて、ウルトラマンのように3分しかもたないか、それとも最後まで楽しむことができるのか。どっちだろ?