バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 譚盾「古筝と弦楽オーケストラのための協奏曲」

 ふとした拍子に出会う音楽がある。音楽作品はそれぞれ人格みたいなものを持っているから、それはある意味、それまで知らなかった誰かに出会う瞬間でもある。今日出会ったのは中国の譚盾(タン・ドゥン, Tan Dun, 1957- )が作曲した「古筝と弦楽オーケストラのための協奏曲」。

 20分ほどの作品だが、YouTubeにあるビデオは4つに分かれているので、いちおうプレイリストも作っておいた。

 ここで言う「古筝(Zheng)」とは中国の箏で、指にはめた義爪で金属弦をはじいて演奏するのだそうだ(→ Wikipedia)。バンジョーみたいな音かと思うとそんなことは全然なく、優美で繊細な弱音から強靱なフォルテまで表現の幅は実に広い。このビデオで古箏を演奏しているのは袁莉(Yuan Li)女史、そして作曲者である譚盾がケルン放送交響楽団を指揮している。
 譚盾の音楽は「強い」。西洋クラシックの伝統的な弦楽合奏の響きやバッハからの引用とともに、冒頭一発目で踏みならす靴の音、演奏者が発する叫び声やため息、中国風のグリッサンド、それからもちろん非西洋楽器である古筝などを全て飲み込む強さを持っている。ビデオを観て感動したのは、その作品の懐の深さだけではない。なにより様々な国の人が集まるヨーロッパのシンフォニー・オーケストラが、作曲者の指揮の下、東洋の音楽作品を楽しそうに演奏している姿に強く打たれてしまった。たとえば、上に埋め込んだビデオの2分23秒から3分21秒までのあたり。すげ〜な。
 昨日聴いたゴットフリート・ファン・デア・ゴルツもそうだったけど、譚盾はなんでこんなに楽しそうに指揮をするかなぁ(笑。この協奏曲を、ぜひ生演奏を聴いてみたいものだ。もちろん作曲者の指揮で!