バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 サン=サーンス「バソン・ソナタ」

 ファゴットとバソン。一般的に言うと、ドイツ式の楽器がファゴット(Fagott)、フランス式の楽器がバソン(basson)である。バロックファゴットに近いのはバソンの方だと言われている。ニコラウス・アーノンクールバロックファゴットを「リードのついたチェロ」と形容していたんじゃなかったっけ。バソンのことを「ありゃメロディー楽器だろ」と言う人もいるけど、弦楽との相性はよさそうに思うのだがどうなんだろ。
 なんで突然バソンの話をしているかというと、YouTubeで偶然これを見つけたから。バソンの神様、モーリス・アラール(Maurice Allard, 1923-2005)が演奏したサン=サーンス最晩年の作品「バソン・ソナタ ト長調 作品168」。

 アラールの吹くバソンの音色は木製のサックスのようで、人間の声帯から音が出ているように錯覚する瞬間がある。美しさの中に「声のきめ」のようなものを感じるからなんだろうな。ファゴットでの演奏を聴いてもそんな感じを受けることはないのが、かえって不思議。

 サン=サーンスの「バソン・ソナタ」は彼が亡くなる1921年の作品。1921年といえば、フォーレの「チェロ・ソナタ第2番」やストラヴィンスキーの「プルチネルラ」が作曲された年であり、あのセヴラックが亡くなった年でもある。あ、ディーリアスの「チェロ協奏曲」も1921年の作品だって。へぇ。
 それはともかく、この「バソン・ソナタ」は時代に取り残されたような古典的な造形を持つ作品だが、その形には研ぎ澄まされた「美」だけが放つことを許される「光」が煌めいている。パブリックドメインとなっている楽譜をネットで見ることができるのは、とてもありがたい。