バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ヘンデル、ヴィヴァルディ、ラモーらの音楽によるパスティーシュ「エンチャンテッド・アイランド 魔法の島」

 感動した!何に?バロック音楽が根源的に持っている力強い生命力に。幕間のインタビューにもあったが、「パスティーシュ」つまり寄せ集めとなったことによってオペラ作品としての焦点がぼやけるどころか、より奥深い世界が繰り広げられていてびっくり。それぞれの曲が本来の脈略を外れているにもかかわらず生き生きと輝いていた。バロックの作品というのは、違った意味を持たせた時に、それを新たな生命力を産む火種として飲み込んでしまうんだな。凄ぇ。

 「魔法の島」は「現代のバロック歌手のために作られた」作品なのだそうだ。歌詞も英語だし、なるほどそう来るか。CGを使った舞台も素晴らしい。台本作家(ジェレミー・サムス)や指揮者(ウィリアム・クリスティー)だけではなく、何人かの歌手たちも選曲に関わったとかで出演者全員やる気満々。これでオーケストラがレザール・フロリサンだったら、さらに完成度が上がっていたのかもしれないが、「現代の」歌手のために作られた「現代のオペラハウス」のプロダクションなのだから、モダン・オーケストラが演奏する意義もあるに違いないと思った。
 本家メトのサイトを探したら、「The Music of The Enchanted Island」というページに「魔法の島」の原曲一覧が掲載されていた。さすが。

フランス語版Wikipediaでは、この一覧が項目ごとにソートできる表になってる。ありがたし。

 この一覧によると、一番多く使われているのはヘンデルの作品で「アルチーナ」序曲を含む26曲。次がヴィヴァルディで9曲、3番目のラモーは7曲。あとは、カンプラ、ルクレールパーセル、フェランディーニ、ルベルが1曲ずつ。ちなみに、第2幕で歌われるフェランディーニの「Sventurati i miei sospiri」は1990年代までヘンデルの作品だと考えられていたものなのだが、ジョイス・ディドナートの歌唱はこのプロダクションの中で最も胸揺さぶられるもの。涙無しに聴くことはできない。

 あと「魔法の島」のストーリーとは関係ないけど、バレエ・シーンの前後を彩るように演奏されるラモーの「Tendre amour」を聴いて一安心。やっぱり、バロック・オペラの舞台にはシャコンヌ風の音楽が出てこなくちゃね。

 というわけで、「サティアグラハ」にも劣らない素晴らしいプロダクションを堪能。もう一回見に行くなら何曜日がいいかな、とか思ってみたり。