バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 フィリップ・ハインリヒ・エルレバッハ「シャコンヌ」

 メトの「魔法の島」で使われたのは、ほとんどが18世紀の作品だったな。一般的に17世紀に活躍したバロックの作曲家というと、リュリとかコレッリとかいうことになるんだろうが、個人的にはゲオルク・ムファット(Georg Muffat, 1653-1704)とフィリップ・ハインリヒ・エルレバッハ(Philipp Heinrich Erlebach, 1657-1714)の器楽作品を特に気に入っている。どちらも18世紀にかかっているけど、細かいことは言いっこなし(笑

 上に埋め込んだのは、1694年に出版されたエルレバッハ作曲「ヴァイオリン、ヴィオラ・ダ・ガンバ通奏低音のための6つのソナタ」の第3ソナタから「シャコンヌ」と「フィナーレ」。本当はその前に、「序奏」「アルマンド」「クーラント」「サラバンド」が控えている。
 この第3ソナタでは、序奏で奏でられたモチーフが、人懐こいシャコンヌに続くフィナーレで再度静かに語られる。そう、このフィナーレはまさに物語の幕を閉じるための「語りの音楽」なんだな。まるでベッドに入った子供に「昔々あるところに」と話し始め、いろいろな国を巡ったあとで「これでお話はおしまい。お休み、よい夢を」と言って絵本を閉じるようだ。エルレバッハの音楽では、そんな感じでヴァイオリンとガンバの2人がなんとも優しく語り合い、聴き手にもその優しさが伝わってくる。ぜひ機会を見つけて全曲を聴いてみましょう。
 ムファットの「ヴァイオリン・ソナタ」や「調和の捧げもの」のパッサカリアも同じようにアーチを描く。そりゃもう、これ以上ないくらい美しい弧を描いて静かに閉じられるのだよ。バロック音楽というと、どうしても「3人称の音楽」になりがちだが、ムファットの初期作品とか、エルレバッハの音楽には「1人称の声」が聴こえてくるような気がする。何故なんだろう?いつか、くにバロでエルレバッハとムファットでコンサートをやってみたいね。