バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 モーツァルト「交響曲第41番〈ジュピター〉」

 YouTubeを見ていたらニコラウス・アーノンクールがヨーロッパ室内管弦楽団を指揮したモーツァルトのジュピターがあった。コンミスは鉄壁のブランケスティン嬢。このビデオがいつまで残っているかわからないので、とりあえずメモ。

 これは1991年12月5日にウィーンのムジークフェラインで行われたモーツァルト没後200年記念演奏会のライブ映像。この演奏会では、最後の3つの交響曲が全てのリピートを敢行して演奏された。もちろんダ・カーポ後のメヌエットも、である。そのため「ジュピター」1曲で43分もかかっている。そこにあるのは、そのように演奏して初めてモーツァルトの真の意図が明らかにされる、という指揮者の信念。
 もうひとつ、この演奏の特徴はスラーをできるだけ楽譜通りに演奏していることだ。弦楽器にどんな長いスラーがかかっていても、できるだけ弓を返さず「ひと弓」で演奏されることで、短いスラーとのアーティキュレーションの違いが明確になる。もちろん、アーノンクール独特のアーティキュレーション・スラーも追加されているが、モーツァルトの音楽は「響きによる語りである」ということなのだな。
 オーケストラで興味深いのは、ベートーヴェンの時と同じく、ナチュラル・トランペットと手巻きで革張りのティンパニを使っていること。その一方で、弦楽器楽器の配置は通常のオケの配置となっており、ヴァイオリンは左手にまとめられている。
 若い演奏家によるオーケストラが、モーツァルトの音楽を心から愛している指揮者とともに、今そこで、舞台の上で、その作品が生みだされる瞬間に立ち会っているかのような演奏を繰り広げている。地球上で何千回と演奏されているに違いない曲を、なぜこんなに初めてであるかのように演奏できるんだろう?ここには、すでに知っているものに出会うような「なつかしさ」など、どこにもない。音楽なんて浸るものではなく創るものなんだよ。レナード・バーンスタインは「全ての音楽は創造(クリエーション)だ」と言ったが、まさにそれを体現する音楽実践がここにある。