バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 マリオ・ブルネロ来日

 今年の6月から7月にかけて、イタリアのチェリスト、マリオ・ブルネロ(Mario Brunello, 1960- )が来日するようだ。

 ブルネロを知ったのは、武満徹が1959年に作曲したチェロと弦楽オーケストラのための「シーン」という、その当時ほとんど演奏されることのなかった作品を収録したCD(AGORA AG155)においてであった。それは、小学館から『武満徹全集』が2002年から2004年にかけて出版される以前の1997年5月に録音されたもので、CDには世界初録音だと書いてあった。『武満徹全集』第1巻p.28に掲載されている「シーン」の作品解説には「この作品は長い間演奏される機会がなく、2002年5月25日、東京、浜離宮ホールで初演の指揮者でもあった岩城宏之氏によって、初演以来43年ぶりに再演された」とあるが、一体ブルネロはこの作品をどのようにして知ったのだろうか?
 ブルネロが奏でる音楽は、常に外へ向けて何かを開放するところがあるように思う。その意味で、聴き手を集中力の渦の中に巻き込むウィスペルウェイとは少し趣が異なっている。また、ブルネロは、「アンサンブルの中で自分がどのような振る舞いをすべきか」を知っている演奏家でもある。それは、J.S.バッハが作曲したブランデンブルク協奏曲通奏低音パートを弾く姿を見るとよくわかるのではないかな。

 この演奏でもう一点、特に興味深いのは、ブルネロがフレーズを紡ぎ出すような「語る音楽」をしていることだ。たとえば、第3楽章の6分23秒から43秒のあたり、それから6分51秒から7分10秒を聴くと、あるフレーズが次のフレーズを呼び覚ましてく様子が手に取るようによくわかる。チェロでこういう演奏ができるのは、ブルネロやヘルヴィヒ・タヘッツィの他に、あと何人くらいいるんだろうか。
 ブルネロの来日公演のプログラムを見ると、無伴奏チェロのための作品を弾く一夜が東京でもあるらしい。このコンサートはもしかして三鷹市の「風のホール」で行われるのかな?どんな演奏が繰り広げられるのか、ちょっと気になるところではあるな。