バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ブリュッヘンが指揮するオランダ放送室内フィルハーモニーのコンサート

 フランス・ブリュッヘン(Frans Brüggen, 1934- )がオランダ放送室内フィルハーモニーを指揮して、モーツァルト「ピアノ協奏曲第17番」とベートーヴェン交響曲第4番」、それからドビュッシーサラバンドと舞曲」(ラヴェル編曲)を演奏してるというので観てみたら存外よかった。オランダの「Radio 4」というチャンネルのサイトによると、この演奏はユトレヒトで2012年3月16日に行われたコンサートの様子をおさめたビデオらしい。

 オーケストラでの弦楽器は、ヴァイオリンが左右に分かれ、チェロが右、ヴィオラが左、そしてヴィオラの後方にコントラバスという配置。つまり18世紀オーケストラと同じ。楽器は全てモダンで、ティンパニは手巻きを使っている。おもしろいのはトランペットで、ドビュッシーではピストンだったのが、ベートーヴェンではロータリー・トランペットに持ち替えてる。
 モーツァルトの協奏曲でアンドレアス・シュタイアーが弾いているのは、フリューゲルではなくモダンなスタインウェイのグランド・ピアノ。ソロ楽器として舞台の正面に置かれるのかと思ったら、蓋を外して指揮者の向かいに配置され、ソリストであるシュタイアーが客席の方を向いて楽譜を見ながら弾いてる。この配置はロジャー・ノリントンの場合とは逆だな。ノリントンの時は、ピアノが指揮者の位置にあり、指揮者ノリントンはオーケストラの中心からピアニストの方を向いて指揮をしてた。
 楽器法を研究すれば現代の楽器でも多様な音色と演奏法が発見でき、活気ある表現が可能とするアーノンクールとは対照的に、ブリュッヘンは、古楽器オーケストラでなければモーツァルトの音楽を再現することができないと考えている。このことは1991年に「21世紀のオーケストラとモーツァルト」と題するエッセイで書いたが、そのことは今でもあまり変わってないのではないか。あれから20年以上が過ぎ、いつのまにか時代は21世紀となってしまった。モダン・オーケストラも、古楽界を中心に活躍する指揮者を迎え、古楽器の奏法や、時によっては金管楽器や打楽器に古楽器を用いる折衷的な「第3の方法」で演奏するようになった。アタマの堅そうなNHK交響楽団でさえノリントンを迎え、ノン・ヴィブラートでベートーヴェンなんかを演奏するようになったのだから、時の流れというのは恐ろしいと感じつつも、ちと感慨深いところではあるな。
 コンサートの冒頭に演奏されているドビュッシーサラバンドと舞曲」は、ラヴェルによって1922年にオーケストラ用にアレンジされた。1922年ということは、今から90年前か。ブリュッヘンたちの演奏は弦のヴィブラートをよくコントロールしていて、ノン・ヴィブラートも取り混ぜながらカラフルな音色を作り出している。このあたりはさすがだな。ブリュッヘンにはラモーだけではなく、近代フランスの作品も演奏して欲しいと願わずにはおられない。