バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ジェラルド・フィンジ「ピアノと弦楽のためのエクローグ」

 ジェラルド・フィンジ(Gerald Finzi, 1901-1956)の「ピアノと弦楽のためのエクローグ Eclogue for Piano and Strings Op. 10」を聴いてみて、あらためてフィンジの音楽には「私」という揺るぎない視点があると思った。ジョン・アイアランドの音楽には吸い込まれそうになるが、フィンジの音楽とつきあっていくには恋に落ちるしかないのではないかな。
 フィンジの音楽は対位法的な展開を伴っていて、実はそのあたりも魅力的に感じる所以でもある。「エクローグ」も期待に違わず、いくつかの声部がからまるようにできていて素直にうれしい。ピアノと弦楽の対話だけではなく、ピアノという楽器の響きの中だけでも様々な対話があり、それぞれの声が、あるときはヴァイオリンと重なったり、低弦のピチカートに乗って思いの丈を語ったりしている。
 ピアノが最初にテーマを奏でるところから「ちゃりらん♪」というプラルトリラーが出てくる。同じような装飾音はセヴラックやリャードフ、そしてボルコムのラグタイムにも出てくるけど、作曲家によって随分と色合いが違うもんだな。いや、色合いというより、そこに込められた意味合いというか「気持ちの向かう方向」というか、なんと言えばよいのかな。これがヴァシリー・カリンニコフの作品になると、ひとつひとつのプラルトリラーに、きびしい生活の中に垣間見える希望の光と命の尊厳みたいなものを感じるのだけど。って、なんだそれ。。。
 というわけで、「エクローグ」を聴いていると時間が止まって抜け出せなくなりそうなので、明日からはフィンジ禁止な(笑