アーノンクール指揮RCOのベートーヴェン「ミサ・ソレムニス」 (2012.05.02追記)
昨日、オランダ「ラジオ 4」のアーカイブズにニコラウス・アーノンクールのコンサートが「3回分」と書いたが、今日見たらひとつ増えてた。なんとそれがロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とのベートーヴェン「ミサ・ソレムニス Op.123」だったのでびっくり。うわっ!
- Radio 4 Concerthuis - Concert - Zondagmiddagconcert: Koninklijk Concertgebouworkest en div. solisten o.l.v. Nikolaus Harnoncourt
http://concerthuis.radio4.nl/concert/1750/Zondagmiddagconcert_Koninklijk_Concertgebouworkest_en_div._solisten_o.l.v._Nikolaus_Harnoncourt
プレーヤーに「01:28:26」と書いてあることからもわかるように、古楽系指揮者としては充分に遅い演奏と言えるだろう。だってガーディナーやヘレヴェッヘ、ノリントンはCD1枚におさまっちゃうんだもんな。では、どんな遅さなのか。
それは魂を静謐な状態へ導き、「穏やかさ」や「調和」へ向かっていくための遅さだ。速いところも、ポリフォニックなラインを互いに戦わせるような力業ではなく、違った動きを持つ複数の声部が調和するよう、余裕のあるテンポで丁寧に演奏している。だから、グローリアを聴き終わったあとも、輝かしく力強い印象を受けるものの、エネルギッシュな高揚感というのが後に残らない。
アーノンクールが「中庸の表現」に長けているということについては、もっと言及されてよいのではないか。「動」と「静」の中間、あるいは「強」と「弱」の中間。普通ならどっちつかずで、結局何でもなくなってしまうような「中庸の表現」が、彼には出来てしまうのだ。これは、2006年と2010年の来日公演で演奏された「メサイア」や「ミサ曲ロ短調」で実感したところでもある。
ヴィブラートを控えめにした弦を中心とするコンセルトヘボウの響きも、ベートーヴェンの大規模なオーケストレーションに透明感を与えていて好ましい。ボリュームで圧倒させるのではなく、音楽それ自体に内容を語らせるには、こういう響きが必要なんだよな。
アーノンクールたちは、4月19、20日とアムステルダムで演奏した後、22日にロンドンのバービカン・ホールで公演を行っている。ロンドンでは、演奏の後、ベートーヴェンとゆかりのあるロイヤル・フィルハーモニック・ソサエティからアーノンクールにゴールド・メダルが授与されたそうだ。めでたい。
- Nikolaus Harnoncourt receives the Royal Philharmonic Society Gold Medal - 22 April 2012, Barbican - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=7J6OkNhmZic
さて、今日は「Dona nobis pacem」を聴いて寝ようかな。平安な世の中を「要求する」のではなく、感謝をもって、聴き手を平安な気持ちに導くようなこの演奏で。
「心より出でしもの、願わくば 再び心に至らんことを」
追記(2012.05.02)
アーノンクールは20年前の1992年にヨーロッパ室内管弦楽団と「ミサ・ソレムニス」を録音している。

YouTubeにセッション・レコーディングの様子を映したビデオがあったのでメモ。会場はザルツブルク祝祭大劇場ということでよいのかな?
- Beethoven: Missa Solemnis - Nikolaus Harnoncourt & Chamber Orchestra of Europe - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=UzZBCXiZ0yo
もうひとつ。コンセルトヘボウ管弦楽団がレナード・バーンスタインと共に演奏した際のビデオ。これは1978年のものだが、その4年後に演奏されたアーノンクールとのC.P.E.バッハと比べてみると、オーケストラの柔軟性が尋常ではないことがよくわかる。くどいようだけど、エマヌエル・バッハの演奏は今から30年前だからねっ!1991年のエッセイで「ビックリギョーテンした」と書いたことを、少しでもわかってもらえるだろうか。
- Beethoven - Missa Solemnis (D-Dur, opus 123) Kyrie - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=-uSME7Bv4JE