バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ラモー「カストルとポルックス」

 どういう星の巡り合わせか知らないけど、偉いさんたちの会合に出る羽目になり、午後丸の内へ。雨が降る前に無事終了したのはラッキーだったかも。なんせ、一張羅のスーツを着ていたわけで。


 丸の内というのは、いくつかの時代のスタイルが混在する街になってしまった。それがうまく溶けあっているのか、キマイラのようになっているのかはよくわからない。東京駅の復元工事が完了したら、どんな顔を持った街になるんだろう。
 会合が予定より早めに終わったので、新装なった新宿のタワーレコードに行ってみた。最上階に移ったクラシックの売り場は、ワンフロアを占有しただけあって広々として壮観。あれだけの在庫数を持っているCDショップというのは、都内では新宿と渋谷のタワーレコードくらいになってしまったんじゃないかな。
 つらつら現代音楽とバロック音楽の棚を見ていたら、ダス・アルテ・ヴェルクの新譜が置いてあった。タイトルを見ると「Concentus musicus in Concert : Live at the Holland Festival 1973」とある。今まで日の目を見なかったアーノンクールの幻のライヴ盤がついにCD化されたらしい。しかも、ありがたいことにLP2枚分の内容がCD1枚にまとめられてるじゃないか。バンザイ。
   

 1973年6月23日、オランダ音楽祭でのライヴ録音。ジャン=フィリップ・ラモーマラン・マレというフランス・バロックの作品が収められているのがうれしい。ちなみに、アーノンクールとコンツェントゥス・ムジクスは、ここで演奏しているラモー「カストルポルックス Castor et Pollux」の全曲盤を、その前年である1972年に出している。

 アーノンクールは著書『古楽とは何か : 言語としての音楽』で、2章にわたって「カストルとポリュックス」について語っている。そのうちのひとつに「エキサイティングなまでに新鮮なフランスのバロック音楽」というタイトルを付けられていることからも、彼がどんなにこの音楽に入れ込んでいるかがわかるだろう。

 それまで知られていなかった新たな作品との遭遇は、ひとりの音楽に起こり得る最大の経験に数えられる。もちろん、この経験はその作品がいつ作られたかということとは完全に無関係で、十七、十八世紀の作品を初めて聴いてみたり演奏してみたりすることは、われらが時代の新作に取り組むのとまったく同様にスリリングである。ラモーのオペラ《カストルポルックス》はわれわれコンツェントゥス・ムジクスにとってそのような体験であった。
 -- 『古楽とは何か : 言語としての音楽』(音楽之友社, 1997)p.302より

 CDに収められた演奏は、この言葉通りの真剣さと熱意にあふれている。もっとも、下に埋め込んだウィリアム・クリスティー、あるいはマルク・ミンコフスキなどの演奏を聴いてしまうと、この40年近く前の演奏にはちょっとした無骨さやら居心地の悪さなんかを感じてしまうかもしれないけれど。まあ、アーノンクールらしくていいじゃないか。
 カストルポルックスというと双子座のふたつの星。そういえば、今はちょうど双子座の時期だっけな。これも星の巡り合わせかのぉ。