バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ムファット「調和の捧げもの」ソナタ第5番

 来年の第10回演奏会へ向けて、演奏用楽譜の準備中シリーズ。ヘレンダールの準備が終わって、ただ今、ゲオルク・ムファット(Georg Muffat, 1653-1704)作曲「調和の捧げもの Armonico tributo」ソナタ第5番に突入している。くにバロで演奏するのは2回目(パッサカリアのみ3回目)なので、以前に使った楽譜の書き込みなんかを吟味。今回使用する楽譜はこれ、8年前に買ったやつ。

 出版者は Musedita、編者は Alessandro Bares、著作権表示は2004年となっている。楽譜のソースは、フランス国立図書館BnF)が所蔵する初版譜(Salzburg : J. B. Mayr, 1682)かな。タイトル・ページの裏にはこのような記載がある。

Fonte / source: Bibliothèque Nationale, Paris
5 fascicoli / 5 part-books / 5 cahiers: violino I, violino II, viola I, viola II, cembalo e violone.

 この楽譜を買った時には気がつかなかったが、BnFが運営する電子図書館「Galica」で、ソースとなった(と思われる)初版譜を見ることができる上に、PDFのダウンロードもできてびっくり。

 Museditaのエディションには、それ以前に出版されていた楽譜と違うところがある。「なんでかな」と思っていたが、たいていの場合、BnF所蔵の原本に由来するものであるようだ。もちろん間違い(たえば、第5楽章パッサカリア188-204小節の繰り返しは原本にも、これまでに出版された印刷譜にもない)もあるけれど。
 で、1682年のパート譜を見て一番興味深かったのは、17世紀における「小節線」の引かれ方。たとえば、このバス・パートは2分の3拍子であるにもかかわらず、小節線の引き方は、2分音符6個分であったり、3個分であったり、はたまた9個分であったりと一定していない。また、ヘンデルのように、長い小節線と短い小節線が交互に引かれるというわけでもない。



 現代の印刷譜では、ここまで再現されてはいない。つまり、普通に2分音符3個分ごとにきっちりと小節線が引かれているわけだ。しかし、当時の書き方を追っていくと、何かそこに意味を見出すことができるような気がする。実際、通常ヘミオラだと解釈されているところに、3拍子であることを示すかのような小節線が引かれている。なるほど、それでムジカ・アンティクヮ・ケルンは、ヘミオラであることを否定するような弾き方をわざわざしていたんだな。これを演奏するのかと思うと、本当にわくわくする。
 というわけで、こちらの準備も遅くなりそうです。関係者の皆様、すんません。