バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 呉祖強「二泉映月」に聴く弦楽合奏の響き

 「TechCrunch Japan」の記事によると、アメリカのティーンエイジャーにとってYouTubeというのは「最大の音楽ソース」なのだそうだ。へぇ。

 ここ数日よく聴いている曲がある。中国の国民的な音楽家・阿炳(アー・ピン、1893-1950)が二胡のために作曲し、作曲家呉祖強(ウー・ズーチャン、1927- )が弦楽合奏用にアレンジした「二泉映月」。中国国立交響楽団ブラームス交響曲を演奏したCDにアンコールみたいな形で収録されているのを聴いていたのだが、YouTubeを探したらちゃんとビデオがあった。

 ひとつ前のエントリーを書いている時にこのCDのことを思い出し、何年かぶりで聴いてみた。やはりポルタメントやトリルの具合が中華風で、我々の感覚とは違っていて大変よろしい。スコアを見たことはないが、おそらく楽譜を読むだけではこんな風に演奏できないんじゃないか、そんな感じがそこはかとなくしてくる。
 音楽に国境がないというのは嘘だ。それはゲオルク・ムファット(ムッファト)が300年以上も前に言及し、それ故に彼は「調和の捧げもの」でその融合を試みたわけだが、中国の音楽を西洋の弦楽合奏という形に翻訳した時に聴こえてくる響きの独特な部分に、私たちはもっと耳を傾けてもよいのではないかな。
 ちなみに阿炳自身が演奏している「二泉映月」というのもYouTubeで聴くことができる。その演奏と比べると、弦楽合奏版は洗練され過ぎているようにも思うけど、遠くの方で繋がっているのは確かだろう。