バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ヴォーン=ウィリアムズ「トマス・タリスの主題による幻想曲」に聴く弦楽の響き



 長年ヴォーン=ウィリアムズ(Ralph Vaughan Williams, 1872-1958)は少し苦手な部類の作曲家だったのだけれど、ひばりの歌声に慣れてきたせいか、いろいろと聴けるようになった。有名な「トマス・タリスの主題による幻想曲」(1910年)は、その中でも苦手な曲の筆頭みたいなものだったが、今では「やっぱりブライデン・トムソン(Bryden Thomson, 1928-1991)は最高だぜぃ」とか言って、ひとり悦に入っている。

 RVWがテーマに選んだトマス・タリス(Thomas Tallis, ca.1505-1585)のメロディーは、彼自身が編纂に関わった「The English hymnal」(1906年)におさめられている。Internet ArchiveからダウンロードできるPDFだと161コマ目(p.131)の92番。

 幻想曲の冒頭に出てくるこのテーマを初音ミクによる合唱に置き換えたヴィデオで聴いてみると、RVWが何をしたのかということがよくわかるのではないかな。

 規模の異なる3つの弦楽合奏(弦楽オーケストラ、小規模の弦楽アンサンブル、弦楽四重奏)が呼応しながら醸し出す弦楽の響きというのは、空間的な立体感だけではなく、「今」という瞬間と「昔日」という時間との間に横たわる距離感を見事に指し示しているように思う。アンドルー・ディヴィスとBBC交響楽団がこの作品の初演の地、グロスター大聖堂で演奏しているヴィデオを観て、そのことを確信した。

 そして、その音響の彼方には同じタリスが40声部の合唱のために作曲したモテット「Spem In Alium」があるのかもしれないとも思った。クロノス・クァルテット(Kronos Quartet)のCDを聴いていたからかもしれないけれど。

 音楽というものは、時に掛け離れた「時間」同士を結びつけることがある。まぁ、そんなことを思い返した日曜日の夜なのであったよ。