ヴォーン=ウィリアムズ「トマス・タリスの主題による幻想曲」に聴く弦楽の響き
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長年ヴォーン=ウィリアムズ(Ralph Vaughan Williams, 1872-1958)は少し苦手な部類の作曲家だったのだけれど、ひばりの歌声に慣れてきたせいか、いろいろと聴けるようになった。有名な「トマス・タリスの主題による幻想曲」(1910年)は、その中でも苦手な曲の筆頭みたいなものだったが、今では「やっぱりブライデン・トムソン(Bryden Thomson, 1928-1991)は最高だぜぃ」とか言って、ひとり悦に入っている。
- Ralph Vaughan Williams - Fantasia on a Theme by Thomas Tallis - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=0U6sWqfrnTs
RVWがテーマに選んだトマス・タリス(Thomas Tallis, ca.1505-1585)のメロディーは、彼自身が編纂に関わった「The English hymnal」(1906年)におさめられている。Internet ArchiveからダウンロードできるPDFだと161コマ目(p.131)の92番。
- The English hymnal : Free Download & Streaming : Internet Archive
http://archive.org/details/theenglishhymnal00milfuoft - Thomas Tallis - Why fumth in fight - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=TVVRHjQ5Vd4
幻想曲の冒頭に出てくるこのテーマを初音ミクによる合唱に置き換えたヴィデオで聴いてみると、RVWが何をしたのかということがよくわかるのではないかな。
- All Miku RVW 『タリスの主題による幻想曲』(冒頭部分)に・・・R.V.Williams - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=40rj7yfmYUk
規模の異なる3つの弦楽合奏(弦楽オーケストラ、小規模の弦楽アンサンブル、弦楽四重奏)が呼応しながら醸し出す弦楽の響きというのは、空間的な立体感だけではなく、「今」という瞬間と「昔日」という時間との間に横たわる距離感を見事に指し示しているように思う。アンドルー・ディヴィスとBBC交響楽団がこの作品の初演の地、グロスター大聖堂で演奏しているヴィデオを観て、そのことを確信した。
- Vaughan Williams - Fantasia sobre un tema de Thomas Tallis HQ - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=cc5_n5Fojkk
そして、その音響の彼方には同じタリスが40声部の合唱のために作曲したモテット「Spem In Alium」があるのかもしれないとも思った。クロノス・クァルテット(Kronos Quartet)のCDを聴いていたからかもしれないけれど。
- Kronos Quartet - Spem In Alium Thomas Tallis - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=6IzwkJKvH6Y
音楽というものは、時に掛け離れた「時間」同士を結びつけることがある。まぁ、そんなことを思い返した日曜日の夜なのであったよ。