バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 オーケストラで聴くドビュッシー「前奏曲集」の響き

 ブリヂストン美術館で開催中の展覧会「ドビュッシー、音楽と美術 - 印象派と象徴派のあいだで」のチケットをいただき、クロード・ドビュッシーClaude Debussy, 1862-1918)を取り巻く状況を垣間見ることができた。ありがたし。

 ドビュッシーの音楽には煌めくものがある。それが発しているのはセヴラックのように乾いた光ではなく、常に細かく色合いが変化し続ける光の粒だ。一方で光の粒は影を生み出し、表と裏の関係にある光と影が一篇の音楽作品を紡ぎ出している。展覧会の図録には「変化してやまない空を前にして、その刻々と更新される荘厳な美しさを何時間も眺めていると、喩えようもない感動に襲われます…。」というドビュッシーの言葉が紹介されてるけど、それを再現するならモダンな楽器より古楽器の方に部があるのではないかな。

 ドビュッシーピアノ曲には、オーケストラ用に編曲されるものが多い。これは題名のついた作品が多いことに加え、その音楽に絶え間なく変化する色彩感が内包されているからなんだろうな。「ベルガマスク組曲」中の「月の光」はストコフスキーやカプレのアレンジで有名だが、2巻ある「前奏曲」はその24曲全てがイギリスの作曲家コリン・マシューズ(Colin Matthews, 1946- )の手によってオーケストレーションされている。たとえば第2巻の「花火(Feux d'artifice)」はこんな感じ。ストラヴィンスキーバレエ音楽火の鳥」の響きに通じるような出来映えになっているのに違和感のないところが興味深い。

 最近発売されたドイツの作曲家ハンス・ツェンダー(Hans Zender, 1936- )の編曲による「風変わりなラヴィーヌ将軍(général Lavine eccentric)」は、中途半端ではない強烈な個性を持っていてなかなかよかった。
    ドビュッシー: 管弦楽作品集 (Claude Debussy : Works - Prelude a l'apres-midi d'un faune / Hans Zender, SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg, Damen Akademiechor Luzern) [輸入盤]
 「ヒースの茂る荒野(Bruyères)」はパーシー・グレンジャー(Percy Grainger, 1882-1961)のかわいらしいアレンジがある。

 「沈める寺(La cathédrale engloutie)」というと、やっぱりストコフスキーのアレンジが無駄に壮大でいいな(笑

 この曲にはドビュッシーの自作自演が残されている。もっとも1913年製のピアノ・ロールだから、どこまで正確に再現されているかはわからないけれど。

 中野の部屋から外を見ると満月が輝いている。月は台風17号の影響で疾走する雲を我々とは反対の方から照らし続けており、その煌めきは刻々と変化している。上で引用したドビュッシーの言葉は「なんという心をかき乱す至高の光景に、自然はそのつかのまの乗客を招くのか」と続くが、今まさにそのような光景が繰り広げられているところなんだな。ドビュッシーがこの光景を見たら、どんな作品を残しただろうか。