バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ウィスペルウェイ、3度目のJ.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲」

 洗濯機のようにこちらの意識を絡め取るピーター・ウィスペルウェイ(Pieter Wispelwey, 1962- )の3度目の録音となるJ.S.バッハ無伴奏チェロ組曲」のCDが届いたのでさっそく聴いている。
J.S.バッハ : 無伴奏チェロ組曲 (全曲) (J.S. Bach : 6 Suites For Cello Solo / Pieter Wispelwey) (2CD+bonus DVD) [輸入盤]
 このCDでは、「無伴奏チェロ組曲」が作曲された当時のケーテンのピッチ「a1=392Hz」で弾いていることが大きな特徴になっている。それは現代のピッチより全音低く、フランス・バロックのオペラやパーセル時代のロンドン、コレッリが活躍した頃のローマなどがほぼ同じ頃合いである。バッハの器楽作品をこのあたりのピッチで、つまり現代よりも約1音低く演奏したCDの中では、バッハ・コレギウム・ジャパンの「ブランデンブルク協奏曲」(旧録音の方)やジークベルト・ランペが指揮した「管弦楽組曲」の初期稿、それからエリザベス・ウォルフィッシュの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」などを聴いてきたが、「無伴奏チェロ組曲」というのは初めてだ。
バッハ:ブランデンブルク協奏曲Bach: the Early OverturesBach;Sonatas/Partitas for Solo
 「ピッチが低くなるとどのように響くか」というと、だいたいこんな感じ。組曲第1番と同じト長調ブランデンブルク協奏曲第4番を例にとって聴いてみるとよくわかるかも。
 まずは現代ピッチから。

 次に古楽器で一般的なa1=415Hz。

 最後に現代ピッチから約1音低いa1=392Hzのあたり。関係ないけど、この演奏いい感じだ。CD買っちゃおうかな(笑

 ウィスペルウェイのCDをかけて(現代で言うところの)ヘ長調の分散和音が鳴り、「ああ、これが聴きたかったんだ」という感慨が湧いてきた。このピッチで楽器を安定させるのは大変なのだろうが、響きの安定感と作品のスケールとの間のバランスがとても良くとれているように思う。だからといって、これが唯一無二の正しいやり方だとは思わないけれど、個人的にはこのピッチでの器楽演奏が増えるとうれしいかもな。
 ところで、YouTubeウィスペルウェイ新盤のプロモーション・ビデオが見られるんだけど、バックに流れている演奏は415Hzなのではないか?どうなのさ。