ウィスペルウェイ、3度目のJ.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲」
洗濯機のようにこちらの意識を絡め取るピーター・ウィスペルウェイ(Pieter Wispelwey, 1962- )の3度目の録音となるJ.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲」のCDが届いたのでさっそく聴いている。
このCDでは、「無伴奏チェロ組曲」が作曲された当時のケーテンのピッチ「a1=392Hz」で弾いていることが大きな特徴になっている。それは現代のピッチより全音低く、フランス・バロックのオペラやパーセル時代のロンドン、コレッリが活躍した頃のローマなどがほぼ同じ頃合いである。バッハの器楽作品をこのあたりのピッチで、つまり現代よりも約1音低く演奏したCDの中では、バッハ・コレギウム・ジャパンの「ブランデンブルク協奏曲」(旧録音の方)やジークベルト・ランペが指揮した「管弦楽組曲」の初期稿、それからエリザベス・ウォルフィッシュの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」などを聴いてきたが、「無伴奏チェロ組曲」というのは初めてだ。
「ピッチが低くなるとどのように響くか」というと、だいたいこんな感じ。組曲第1番と同じト長調のブランデンブルク協奏曲第4番を例にとって聴いてみるとよくわかるかも。
まずは現代ピッチから。
- The Brandenburg Concertos, with Claudio Abbado (09/10) - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=MijnxdEC4PQ
次に古楽器で一般的なa1=415Hz。
- Bach - Brandenburg Concerto No. 4 in G major BWV 1049 - 3. Presto - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=W2Rpry9EkZ8
最後に現代ピッチから約1音低いa1=392Hzのあたり。関係ないけど、この演奏いい感じだ。CD買っちゃおうかな(笑
- J S Bach Brandenburg Concerto No.4_3rd movement - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=M68xqxtiFg8
ウィスペルウェイのCDをかけて(現代で言うところの)ヘ長調の分散和音が鳴り、「ああ、これが聴きたかったんだ」という感慨が湧いてきた。このピッチで楽器を安定させるのは大変なのだろうが、響きの安定感と作品のスケールとの間のバランスがとても良くとれているように思う。だからといって、これが唯一無二の正しいやり方だとは思わないけれど、個人的にはこのピッチでの器楽演奏が増えるとうれしいかもな。
ところで、YouTubeでウィスペルウェイ新盤のプロモーション・ビデオが見られるんだけど、バックに流れている演奏は415Hzなのではないか?どうなのさ。
- Cello Suites J.S Bach - Trailer DVD Pieter Wispelwey- Release 22 september 2012 - YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=s7s4rCckyoc