バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 S.ソルステインスドッティルが演奏するブリテン「無伴奏チェロ組曲第1番」

 またNMLで素晴らしい出会い。サイウン・ソルステインスドッティル(Saeunn Thorsteinsdottir)女史が演奏するベンジャミン・ブリテン無伴奏チェロ組曲第1番」。

   Three Suites for Cello
 彼女が演奏する第1番は速い。組曲全体で21分49秒というのは、少なくとも今NMLで聴くことのできる演奏のなかでは最速。

 では、すっ飛ばしてガサゴソやっているのかというと、そうではない。声を張り上げず、大見得を切るわけでもなく、近しい相手に語るように弾いている。もちろんヴィブラートは少なめ。フレーズを流れるようにとることも、テンポが速くなる要因のひとつである。
 大きな空間でヴィブラートを目一杯かけ、大音量で弾き飛ばすのとは対極の、フレーズの最後をいつも内向きにおさめていくようなブリテン無伴奏。それはまるで心の襞をなめらかに紡ぎ出していくかのようだ。おさめた先にあるのは何だろう。奥底の方へ向かって深く沈み込む透明な暗闇?ようやく聴きたいと思っていた演奏にめぐり会えたような気がする。