ロストロポーヴィチとブリテンによるブリッジ「チェロ・ソナタ」
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(Mstislav Rostropovich, 1927-2007)がチェロを弾き、ベンジャミン・ブリテン(Benjamin Britten, 1913-1976)がピアノで伴奏をしているフランク・ブリッジ(Frank Bridge, 1879-1941)「チェロ・ソナタ Sonata in d for cello and piano (H.125, 1913-17)」のCDを探し出して聴いてみた。うちにあるのはDeccaの「The Classic Sound」というシリーズの1枚で、音質に芯があるのと、エコーの付加が気にならないレベルなのでとても気に入っている。1968年7月、スネイプのモールティングス(The Maltings, Snape)での録音。
英文の解説書にはブリテンとロストロポーヴィチの関係、師ブリッジのこと、「チェロ・ソナタ」の特徴などが書かれている。それによると、ブリテンは10代の頃からこの作品に慣れ親しんでおり、ロストロポーヴィチをバックスやアイアランドのようなイギリスの作曲家に特徴的な半音階的な作風へと導きながら、見事な演奏を形作っているとある。また、ブリッジのソナタにはフォーレやベルク、そしてブラームス「クラリネット・ソナタ第1番 ヘ短調」の影響が見られるようだ。
ブリテンのピアノは音がきれいでバランスがとてもよい。メロディーや伴奏がきちんとそれぞれの役割を果たし、和音の移り変わりも極めて明確なので、作品それ自体が語りかけてくるようだ。ロストロポーヴィチが弾くチェロの響きは力強く隙がない。これまで誤解していたが、ロストロポーヴィチの音楽はただの「歌」ではなく「語り歌」なんだな。彼のチェロはメロディーに乗せていつも何かを語っている。この二人が奏でるアンサンブルは、これまで聴いてきたディスクの中で、いやそれを飛び越えて唯一の価値を持っていると言ってよいと思う。作品を聴きたいならこれだ。いや、まいった。
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