バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ヴォーン=ウィリアムズ「音楽へのセレナード」

 音楽はどんな力を持っているんだろう。ヴォーン=ウィリアムズ(Ralph Vaughan Williams, 1872-1958)の「音楽へのセレナード Serenade to Music」を聴きながらそう考えた。

 シェイクスピアヴェニスの商人』第5幕第1場の台詞を歌詞とするこの作品は、音楽の力を讃える月光の調べ。

堤に眠る月明かりの、この美しさはどうだ!
ここに腰をおろして、忍び寄る楽の調べを
静かに聞こうじゃないか?この快い静けさ、この宵、
音楽の快い調和に、なんというふさわしさだ!

 音楽は時間芸術として様々な時間を作り出す力を持っている。そしてもうひとつ。ピタゴラスは「それぞれの惑星が回転しながら固有の音を発し、太陽系全体で和音を奏でている」と考えた。音楽というのは宇宙の神秘的な調和を映し出す。天体のハルモニア。「調和」という力。

あのうちの一番小さな星でも空をめぐりながら天使のように歌を歌っているんだ、
嬰児の眼をした天使たちの声に合わせて。 (5幕1場)
There's not the smallest orb which thou behold'st
But in his motion like an angel sings,
Still quiring to the young-eyed cherubins;
 >> 世界劇場だより/シェイクスピアや舞台芸術についてのエッセイ集

 「音楽へのセレナード」にはオーケストラ版もあって、歌詞がないせいか、作品の内容がより抽象的かつ明確に描き出されているように思う。「揚げひばり」よりも空高く、天空に想いを馳せるヴォーン=ウィリアムズ。

 ゲオルク・ムファットが「調和の捧げもの Armonico Tributo」に“敵対するものの宥和”という願いを込めたのは、音楽が持つ調和という力があってこそ、だったのではないかな。

   

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