バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 レジナルド・グッドオールが指揮するヴァーグナーとブリテン

 近所の中古CD屋でレジナルド・グッドオール(Sir Reginald Goodall, 1901-1990)が指揮するヴァーグナーの楽劇「神々の黄昏」第3幕抜粋を発見。聴いてみたら想像していたより良かった。1972年の年末に2日間にわたってロンドンのガイルズ教会で行われたセッション録音。
Wagner;Twilight of the Gods
 グッドオールの名前を知ったのは、随分昔に発行されていたHMVのフリーペーパー『はんぶる』に掲載されていた山崎浩太郎氏の連載においてだった。ありがたいことに、その内容は今でも彼のウェブサイトで読むことができる。また、その後に執筆された伝記『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男 : 指揮者グッドオールの生涯』にはさらに詳しい生涯が綴られている。

 よく知られているようにグッドオールが残したヴァーグナーの録音は、英訳した歌詞で歌っていることが多く、この第3幕抜粋も例外ではない。また伝記にも書かれているように、グッドオールの指揮はわかりにくいせいか、オーケストラの演奏が散漫になることもある。しかし、この演奏には独特の息の長さがあり、なによりも作為的なところや押しつけがましさがなく、聴き手が自然に入り込むことのできる「流れ」がある。グッドオールは指揮棒を持たずに打点を出すわけでもないから、確かにわかりやすい指揮ではないが、オーケストラの流れを無駄に遮ることがない。彼の演奏に聴くことのできるスケール感というのは、そんなところから出てくるのだろう。

 さて、グッドオールはブリテンのオペラ「ピーター・グライムズ」の初演者としても有名だ。EMIの37枚組ブリテン箱の最後のCDには、グッドオール指揮による1947年の抜粋録音がおさめられている。オーケストラの緩みがごく一部で聴かれるものの全体としてはキリリと締まっており、作品を深く理解した見事な演奏と言っていいだろう。初演で大成功を収めたのも頷ける。
Britten: The Collector's Edition
 山崎氏のグッドオール伝によると、この録音は「監修にあたったブリテンその人の反対により、SPでは発売されずに終わった」のだそうだ。理由は「ピアーズの歌に説得力の不足を感じたからだという」。当初バリトンに設定していた主人公の音域をテノールに変更してまでピーター・ピアーズに歌わせたのに、とも書かれているが本当のところはどうだったのだろうか。