バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 METライブビューイングで観た「リゴレット」

 休みの日だというのに早起きして職場のブログを更新、あたふたと家を出て上演10分前くらいに会場に到着。そしたら新宿ピカデリーで自分が座るはずのあたりに、ずらっとおばちゃんたちが座っているわけですよ。その列の中にひとつだけ空いているところがあって、そこが今日のおいらの席だ。
 どうして、いつもこう極端なのか。。。
 METライブビューイングで、生まれて初めてヴェルディの「リゴレット」を観た。「リゴレット」は、伝説の指揮者レジナルド・グッドオールが言うところの「ブンチャッチャ・オペラ」のひとつと言っていいと思う。ただし、今回は時代の設定が原作の16世紀マントヴァではなく1960年代のラスベガス。極端な状況で観た極端な設定のオペラは、想像していたよりずっとおもしろかった。

   

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 今回はわざと予習をしなかったのだが、この作品では音楽のあり方がモーツァルトのオペラに近い。特にアリアで「ないところ」までモーツァルトの延長線上にあり、アーノンクールヴェルディのオペラを高く評価する理由が少しわかったような気がして嬉しかった。筋書きもドラマチックだし、「知らない」ということ、つまり先入観を持たないということが物事をこんなにも新鮮にするとは思わなかった。物語が無理なく1960年代のラスベガスで展開し、歌手も第2幕以降は文句なし。映画「ファンタジア」のおかげでデュカの「魔法使いの弟子」がミッキーマウスの曲になってしまったように、このプロダクションのせいで、自分の中では「リゴレット」がすっかりラスベガス・オペラになってしまったさ。

 例によって幕間には関係者のインタビューがあり、美術と衣装の担当者が「1960年代のラスベガスの雰囲気を出すために沢山の資料を収集した」と言っていた。確かに舞台を観ていて綻びを感じることはなかったが、それが徹底した調査によるものだとは!さすがだ。歌い手の話によると、それっぽく見せるために身のこなしや仕草にまでチェックが入ったという。きっと、資料を収集して必要な人達に提供できるようなライブラリーとかアーカイブズというのは、ショービジネスの世界でも必要とされているんだろうな。あと、休憩中に行われる舞台転換の様子が映し出されていて見入ってしまい、席を立つきっかけを失ってしまうところだった。現代の巨大なオペラハウスでのというのは、舞台装置もスケールが桁外れ。
 オペラの名曲をネタにしたオムニバス映画「アリア」の中に「リゴレット」を使ったのがある。そう、「女心の歌」をプレスリーが歌っているアレ。ここに貼り付けようかと思ってYouTubeで観てみたら、単なるお下劣ショート・ムービーだったのでやめた。そのかわりにギュスターヴ・シャルパンティエ(Gustave Charpentier, 1860-1956)の「ルイーズ Louise」にデレク・ジャーマンが映像をつけたのを置いておこうか。この映像のおかげで、「ルイーズ」は自分の中で「おばあちゃんオペラ」になっている(笑。いや、それだけ素晴らしい内容だっていうことなんだけどさ。