バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 スピラ・ミラビリスが奏でるシューマン「交響曲第1番〈春〉」

 古楽器による演奏が特別なものでもなんでもなくなって久しいが、21世紀のモダン・オーケストラがついに新しい方向を向き始めたかもしれない。「スピラ・ミラビリス Spira mirabilis」という名のオーケストラが演奏するシューマンを聴いてそう思った。

 指揮者がいないにも関わらす演奏の精度が驚異的に高い。しかしそれ以上に特別だと思うのは、アーノンクールのような古楽出身の指揮者が実践して来たことを、オーケストラだけで実現しているところだ。少ないヴィブラート、明確なフレージングとアーティキュレーションアウフタクトの持って行き方や、段落をつけようとするときのゲネラルパウゼでの間の取り方などなど。ヴィデオでは交響曲冒頭のファンファーレの表情を合わせるのに、各自のパートに歌詞を付けて歌っている様子が映されているが、意思の統一を図るために、楽器ではなく歌って合わせるという練習方法を使っているようだ。

 オーケストラのリーダー、ロレンツァ・ボッラーニ嬢(Lorenza Borrani)は、2008年よりマリエケ・ブランケスティン女史と共にヨーロッパ室内管弦楽団コンミスを務めている。そうやってよく見ると、オケの中にヨーロッパ室内管弦楽団のメンバーが何人も参加してるじゃないか。なるほど、それで演奏する際の語法が揃っているのかと納得。
 スピラ・ミラビリスのウェブサイトには、このプロジェクトの活動方針などが掲載されていて、古楽器を使ったプロジェクトも平行して行っているとか、コンサートでは原則として1曲だけを演奏しますなどということが書かれている。今後の活動も要注目だな。