バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 18世紀オーケストラが奏でる「Herr, gib, daß ich dein Ehre」

 フランス・ブリュッヘン(Frans Brüggen, 1934- )と18世紀オーケストラ(Orchestra of the 18th Century)の最後の来日公演が終わってしまった。結局どの公演にも行くことはできなかったが、最終日、2013年4月6日(土)の公演のアンコールのひとつとしてJ.S.バッハカンタータ第107番〈汝、何を悲しまんとするや〉」の最終コラールが演奏されたというのを聞いて「しまった!」と思った。この曲、「主よ、あなたの栄光を与えてください Herr, gib, daß ich dein Ehre」はおそらく1980年代からアンコールとして演奏され、「ガラ・コンサート」と題されたアルバムに収録されていたアレではないか。
Gala Concert
 このアルバムは18世紀オーケストラの創立10周年を記念する「アンコール集」で、シャイトやグルックなど、このアルバムでしか聴けない曲が何曲か含まれている。たぶん、バッハのコラールもその一つなのではないかな。ジーグのリズムで書かれたオーケストラ・パートからあふれ出る響き、そしてコーラスの代わりに言葉をかみしめるように奏でられる管楽器の響きは、18世紀オーケストラのディスクの中でも特に心を揺さぶられるものだ。このカンタータは「信仰に対して揺れ動くキリスト者に対しての確信に満ちた説得」をテーマとしているが、その演奏からはブリュッヘンやオーケストラのメンバーたちの音楽への深い信仰も聴きとることができる。
 おもしろいことに、このコラールはアルバムの最初と最後に半音違う調で2度収録されている。もしかしたら低いピッチの演奏は、ラモー・プログラムのアンコールとして演奏されたものなのかもしれないなと勝手に想像しつつ、昨晩の演奏はどんな感じだったのだろうなと思うのであったよ。
 ちなみに、カンタータ第107番はこんな作品。ブリュッヘンの朋友、故グスタフ・レオンハルトの演奏だと16分18秒のあたりから最終コラールが始まる。コラール冒頭の音の動きはメンデルスゾーンスコットランド交響曲と同じ「ミ→ラ→シ→ド」、歌詞は「主よ、あなたの栄光を与えてください。そう、まさにわたしの命の続く限り」と始まる。