バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 リュリをどう演奏するか

 くにたちバロックアンサンブルの反省会があった。参加者11名、そのうち男性は自分を含め3名。「ほとんど女子会ですね」とか言って楽しそうに喋ってる女子の皆様が8名。女子会なんて出たことないけど、そうだとしたら未知の世界へ足を踏み入れているんだなとか思いつつ、少々年のいった男子3名は端っこのところに陣取ったのであったよ。
 で、こないだの演奏のこと、運営のことなどいろんな話をするうちに、来年どんな曲を演奏するかということになり、女子会の方では「やっぱりリュリが好き♥」とか言ってる。普通なら、バッハとかヘンデルとかいう名前が出て来るだろうに、リュリという名前を聴くだけで即座に目が輝く人が何人かいるところがうちの合奏団らしい。
 これまで、くにバロではジャン=バティスト・リュリJean-Baptiste Lully, 1632-1687)の作品を2曲演奏している。「ファエトン」の「シャコンヌ」と「アルミード」の「パッサカーユ」、どちらもオペラの中でオーケストラによって演奏される舞踏曲だ。本当ならヴィオラ・ダ・ガンバや管楽器、テオルボとかバロック・ギターなどの撥弦楽器も入れるべきなのだが、諸事情からくにバロでは弦楽合奏チェンバロだけで演奏してきた。その時はそれなりに納得して演奏していたのだが、下のヴィデオを観るとリュリ時代と今とでは楽器が違いすぎて、「一体、現代の楽器でリュリを演奏し得るのだろうか?」という素朴な疑問を持たざるを得ない。

 それはともかく、リュリの作品には素晴らしい内容のものが少なくないので、「どうしたらすっきりした気分で演奏できるんだろう」と思っていたところ、こんなCDがあるのを思い出した。
Divertissements
 このCDでは、スキップ・センペ(Skip Sempé)が彼のアンサンブルである「カプリッチョ・ストラヴァガンテ」と共に、リュリの作品を5つの弦楽器とチェンバロだけで演奏している。弦の編成は「2つのヴァイオリン、ヴィオラヴィオラ・ダ・ガンバ、チェロ」(日本盤解説書p.3)各1名という、我々には大変魅力的な組み合わせ。なぜ、このような編成を選んだのかについて、センペは解説書にこう記している。

 壮麗な衣装と舞台と機械仕掛けによるヴェルサーユ宮殿における大掛かりな催し物は、よく知られています。しかし、この時期の、もっと私的で親密な室内楽は、ほとんど注目されてきませんでした。音楽的史料と一般の歴史的資料はいずれも、リュリの音楽の室内的演奏が頻繁に行われていて、非常に人気が有ったことを物語っています。[中略] リュリの全作品の目録を見ると、それらの音楽がフランスや国外で、次々と求められるコピーと印刷譜によって、また、本来の形や変形された形によって、あるいはまた、楽器編成が様々に取り替えられて、どれだけ速く流布していったかが分かります。
[中略]
 当時は、室内楽編成の5声部の音楽を演奏する際には、様々な弦楽器の組み合わせが可能だと考えられていたようです。フランスであれほど高く評価され讃えられていたヴィオラ・ダ・ガンバ ― マレ Marain Marais (1656-1728)とフォルクレ Antoine Forqueray (1671/2-1745)が、この分野を代表する音楽家でした ― が、室内楽の演奏で、ヴァイオリン族の楽器とともに用いられなかったとは、とても考えられません。[後略]
 ― センペによる解説より(日本盤解説書p.2-3)

 この文章を読んで、だいぶ気が楽になった。くにバロの合奏にガンバを入れることは少し難しそうだが、ムファットがそうしたように、ヴィオラを2部に分けて演奏しても、そんなに罰は当たらないのではないかな。
 ちなみに、センペらのCDはこんな演奏。くにバロでも「プシケ」序曲と「アマディス」のシャコンヌを演奏できたらいいな、と思っている。まぁ、どうなるかはわからんけど。