バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 レ・シエクルがプロムスで奏でるリュリとラモー

 ジャン=バティスト・リュリJean-Baptiste Lully, 1632-1687)というと「床を打ってリズムをとるための重い杖で誤って自分の足を打った」という有名なエピソードがある。映画「王は踊る Le Roi Danse」の冒頭ではそれを再現している。そこでの映像は生々しいけれど、ラインハルト・ゲーベルとムジカ・アンティクァ・ケルンの演奏は最高。

 で、一度でいいから、そんな風に床を打ち鳴らしながらリュリを演奏するコンサートを聴いてみたいと思っていたら、今年のプロムスでフランソワ=グザヴィエ・ロト(François Xavier Roth, 1971- )とレ・シエクル(Les Siècles)が、そんなような演奏をしていた。

 映画とは違って、ロトは杖で軽くビートを取るだけだ。このぐらいなら、間違って足にあたっても怪我をしそうにないし超安全。演奏も軽快。でも、それでいいのだろうか?あとで命を落とすぐらいの強さで杖が叩かれていたのなら、そのビート音に合わせて奏でられる音楽は、ゲーベルみたいな拍を決め打ちするような「縦ノリ」になるのではないか。

 それはさておき、レ・シエクルによるリュリの演奏はとても興味深い。まず、ロイヤル・アルバート・ホールのような巨大な会場で演奏するためだと思うけど、16フィートの音域を担当するコントラバスを4台も使ってる。また、有名な「トルコ人の儀式のための行進曲」(ヴィデオだと9分30秒あたりから)では、まず打楽器とバス・パートのみで演奏し、繰り返しの部分で内声部が加わり、3度目に繰り返された時にはじめてメロディーが演奏される。こうすると、リュリの内声部がどれだけおもしろく書けてるかがわかってなかなかよろしい。いつか、くにバロでも真似してみたい。
 ところで、この日のコンサートではリュリとラモーのあとにドリーブとマスネのバレエ音楽、そして休憩の後ではなんとストラヴィンスキー春の祭典」が古楽器で演奏されたようだ。このハルサイについては、別の機会にちょっとだけ書いてみたいと思ってる。いつになるかはわからないけど。