日々雑感
JR国立駅から北口をでて5分ほど歩くと、右手に大きな坂道が出現する。どんなに暑くても、寒くても、くにバロの練習が国立であるときには必ずそこを登らなければならない。最近は台風なんかで中止になることがあって、「どんなに雨が降って風が吹こうとも」と書けないところは残念なのだが、これはまあ仕方がない。でっかい楽器のケースを持ったまま、大きな坂を転がり落ちたくはないからな。
練習に行く時には、楽譜のほかに移動中に読むための音楽書を持って行く。今、2冊の本を読んでいて、1冊はエーリッヒ・クライバーの評伝。彼と同時代の指揮者の録音は随分と聴いたから、ポツポツと拾い読みしても楽しい。もう1冊はフランス・バロックのオペラについて書かれた新書で、宿題のようにして読んでいる。宿題とは言え、もともと興味の中心にあるような内容だから読んでいて苦になるということはない。バッグの中には重たい楽譜が入っているので、持って出るのは宿題の方。“そうでない方”は自宅の机の上に載っていて、気が向くと手を伸ばしてパラパラめくるような感じ。開けたページには、必ず琥珀が埋まっている。
『Switch』という雑誌に載っている小泉今日子のエッセイがいいというので、通勤途中の本屋で立ち読み。「アキと春子と私の青春」と題された文章はたった1ページなのだけれど、力強くてかっこいい。ぶっきらぼうだが、暖かい気持ちに満ちあふれているのがしっかりと伝わってくる。「ぶっきらぼう」という印象は、物事を客観的に捉え、描写的に語る文体からくるのだろう。そして、それを語る主体こそが春子を演じた小泉今日子である。なんか、かっけーなと思ったので、珍しく買って帰った。