バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 写真・映画で見るグレン・グールド展

 ノー残業代デーの水曜日。カナダ大使館高円宮記念ギャラリーで開催中のグレン・グールドGlenn Gould, 1932-1982)の展覧会に行ってきた。

 高円宮記念ギャラリーは、カナダ大使館の地下2階、つまり「E・H・ノーマン図書館」と同じフロアにある。ここは、かつてグールドの自筆譜や書き込みのある楽譜、有名な折りたたみ式の椅子などを集めた展覧会が開催された場所。そんなに広くはないが、決して狭くはないその空間に入ってみると、A2サイズほどのモノクロ写真が白い壁に15枚掛けられている。若い頃のレコーディング風景が中心で、どれもどこかで観たことのあるようなものだった。その他に、グールドの略歴を記したパネルが3枚(日・英・仏)。そして、左手の壁には映画「グレン・グールドトロント Glenn Gould's Tront」(1979年、ジョン・マクリーヴィ監督、50分)のビデオが日本語字幕付きで投影されてた。これはまだDVDになっておらず、昨年本邦初上映されたものだ。
 映画を観るのに大きめの椅子がひとつ用意されており、そこに始終2人とか3人とか座ってる。映画はグールドがトロントの街を紹介するもので、彼が演奏している場面はほとんどない。そのかわり、マーラーの「魚に説教するパドヴァの聖アントニウス」を動物園の象に向かって歌うという、例の場面を観ることができる。
 これがこの展覧会の全てだ。そのシンプルとも言える内容に最初は驚いたが、壁に掛けられた写真以外に何もない「がらん」とした広い空間にあらためてグールドの不在を感じ、そのせいか、壁に映し出されるグールドの姿と彼の声が、昔より遠くへ行ってしまったような気がした。「そっか、亡くなってから、もう30年以上経っているのか」という実感。遠くに離れていったのはグールドの方なのか、それとも自分なのか、その距離をまた縮めることはできるのだろうか、と思ったのであるよ。
 「グレン・グールドトロント」はYouTubeのリストで全編を観ることができる。残念ながら字幕はないけれど。