バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 ブーレーズが奏でるヘンデルの響き

 昨年末に、タワーレコードからピエール・ブーレーズPierre Boulez, 1925- )が指揮するヘンデル「水上の音楽」のCDが再発されたので買ってみた。オーケストラはハーグ・フィルハーモニー管弦楽団、1964年の録音。

 意外に思われるかもしれないけれど、ブーレーズにはヘンデルの録音がいくつかあり、これはそのひとつだ。「水上の音楽」は1974年にニューヨーク・フィルハーモニックと再録音しているが、そちらでは序曲冒頭の16分音符を32分音符にするなど、バロック風なリズムの読み替えをしているのが興味深い。
   ヘンデル:水上の音楽&王宮の花火の音楽
 ブーレーズは、1973年に同じくニューヨーク・フィルと「王宮の花火」も録音しており、こちらの方はオペラ「ベレニーチェ」序曲および「二つの合奏体のための協奏曲 ヘ長調 HWV334」と合わせて1980年にLPレコードで発売された。「王宮の花火」以外の2曲がCDで再発されていないか検索したところ、すでに廃盤となっている2枚組CDに収録されていた。
   Water Music / Fireworks Music
 入手してわかったことだが、「ベレニーチェ」序曲だけはフィルハーモニア室内管弦楽団(Philharmonia Chamber Orchestra)との演奏だった。別のCDによると1978年9月ロンドンでの録音とあるから、もしかしたらフィルハーモニア管弦楽団のメンバーによる小編成のオーケストラなのかもしれない。
 「ベレニーチェ」序曲は1) フランス風序曲、2) アンダンテ・ラルゲット(メヌエット)、3) ジーグの3楽章から成っており、メロディーが美しい第2楽章だけはバロック音楽のコンピレーション・アルバムなどにも収録されている。序曲のフーガはゆったりした少し遅めのテンポで、各声部が混濁することなく、ひとつひとつの音型がほどよくばらけていて、我々の耳にも聴きやすい。音型がばらけているのはアンダンテ・ラルゲットのメヌエットも同じで、ヴァイオリンの奏でるメロディーがフレーズの最後を「おさめるように」演奏しているせいか、モダン・オーケストラにもかかわらず違和感なくまとまっているのが素晴らしい。

 なお、ニューヨーク・フィルとはヴァイオリンを対向配置で演奏しているが、「ベレニーチェ」での弦楽器は、左側にヴァイオリンをまとめる通常の配置のようだ。フィルハーモニア独特の柔らかい弦の響きとともに、モダン・オーケストラによる最良のヘンデル演奏のひとつであるように思う。タワーレコードあたりで、序曲の全曲を含む「王宮」アルバムを復刻しないものだろうか。