クラウディオ・アバド追悼
2014年1月20日、クラウディオ・アバド(Claudio Abbado, 1933-2014)が亡くなった。享年80歳、心からご冥福をお祈りしたい。
- The era of Claudio Abbado - Berliner Philharmoniker
http://www.berliner-philharmoniker.de/en/geschichte/claudio-abbado/
アバドの生演奏に接したのは2回、1991年のヨーロッパ室内管弦楽団とのツアー、それから1994年のウィーン国立歌劇場とのムソルグスキー「ボリス・ゴドゥノフ」だ。梶本音楽事務所のウェブサイトに掲載された来日公演の一覧を見て思い出した。
- マエストロ・クラウディオ・アバドの訃報に寄せて
〔KAJIMOTO - 2014年1月20日〕
http://www.kajimotomusic.com/jp/news/k=1693/
→ Internet Archiveのキャッシュ
「思い出した」というからには忘れていたわけで、白状すると、これまでアバドの演奏にはあまり関心が向なかった。ふたつの例外を除いて。ひとつはJ.S.バッハの「ブランデンブルク協奏曲」。もうひとつは2003年8月にルツェルン祝祭管弦楽団と演奏したドビュッシーの交響詩「海」だ。
- Debussy - La Mer (Abbado) - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=yrLRZCbN3Eg
アバドはいつもながらに暗譜で指揮台に立ち、巨大なオーケストラを通して、ドビュッシーの作品に煌めきに満ちた生命を吹き込んでいる。ヴィデオを観ていると、オーケストラの面々もそれを存分に楽しんでいるのがわかる。たとえば、6分3秒のところから始まるチェロのアンサンブル。ベルリン・フィルのゲオルク・ファウストとロシアのチェリスト、ナターリャ・グートマンに率いられ、4部に分かれたチェロたちが海の情景を描いているが、そこに無機質な統制感は存在しない。チェロ・アンサンブルが一体となって編み出す和音からは、はじけるようなリズムとともに、他の演奏では聴くことのない生命力を感じることができる。そこにあるのはアバドでもオーケストラでもなく、命を吹き込まれた音符から立ち現れる音楽作品の活き活きとした姿だ。アバドの演奏から聴くべきはこれだったんじゃないか、あらためてそんなことを感じたのであるよ。合掌。