バシッといこうぜぃ blog

バロック音楽や弦楽合奏曲を中心にいろいろ。

 クラウディオ・アバドとマーラー室内管弦楽団によるベートーヴェンの響き

 ここ数日、クラウディオ・アバド(Claudio Abbado, 1933-2014)のヴィデオをYouTubeで観ている。その中でマーラー室内管弦楽団(Mahler Chamber Orchestra)と演奏したベートーヴェン交響曲第2番 ニ長調 Op.36」が興味深かったのでメモ。

 「室内管弦楽団」のスケールに合わせコントラバスは4本。弦楽器のヴィブラートは少なめで、ナチュラル・トランペットと革張りのティンパニを使用しているが、そのあたりのコンセプトはニコラウス・アーノンクールが1990年初頭にヨーロッパ室内管弦楽団(Chamber Orchestra of Europe)と録音したベートーヴェン交響曲全集とよく似ている。
 アバドは2001年にローマでベートーヴェン・ツィクルスを指揮しており、同じ交響曲第2番の演奏をヴィデオで観ることができる。この時のオーケストラはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団であったにもかかわらず、コントラバスが3名と小振りなサイズ。

これは、その9年後の2010年にイル・ジャルディーノ・アルモニコジョヴァンニ・アントニーニ(Giovanni Antonini, 1965- )がベルリン・フィルに客演した時と同じだ。

 モーニカ・メルトル著『ニコラウス・アーノンクール』(音楽之友社, 2002.11)によると、アーノンクールがヨーロッパ室内管弦楽団ザルツブルクベートーヴェンの作品を演奏した際、アバドはそのリハーサルに居合わせていたそうである。

 ザルツブルクベートーヴェン・ツィクルスの際、彼[アバド]は練習に居合わせていました。『ミサ・ソレムニス』のときもそうです。そこで私[アーノンクール]は彼と響きのバランスについて話し合いました。[中略] 彼は時折ベートーヴェン交響曲の楽譜の違った解釈について質問してきました。というのも私はその問題について非常に精確に研究していましたので、彼は私がどのような成果を得たか、知りたかったのです。
 ―― モーニカ・メルトル著『ニコラウス・アーノンクール』p.344より

 晩年のアバドは、ベートーヴェンには巨大なオーケストラによるリッチな響きではなく、小振りなオーケストラによるスタイリッシュな響きの方がふさわしいと感じていたのだろう。アーノンクールとのディスカッションの成果は、ベルリン・フィルマーラー室内管弦楽団との演奏にも活かされていたに違いない。では、その響きによって実現したかったこととは何だったのだろうか。何をベートーヴェンの本質と捉えていたのか。これからは、そんなことを考えてみたいと思っている。